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冬の空 3
盛大な連続花火がチラチラと残り火を放ちながら消え、夜空にしばしの静寂が訪れると、やがてどちらからともなく肩を寄せ合い、お互い白い息を吐きながら、小さく笑った。
「冬の空は澄んでいるから、花火も更にきれいだね」
「あー、そうか、そうだな……めちゃくちゃ寒いけどな」
空になったワインの小瓶を握り締めブルリと身体を震わせると、ハルが俺のコートのフードをスポリと被せ、それからぎゅうと両手で俺の身体を抱きしめた。
「わっバカ、やめ、他人に見られるだろ!」
「気にするな、暗闇だし、見られたって赤の他人だ」
気にするわボケ!
と言いかけた口を塞がれ、ハルの熱い舌に潜り込まれてむぐぐと声を漏らした時。
同時にぱっと目の前が光り、大花火が夜空一面に広がった。
すこし遅れてドンと鳴り響く重低音を感じながら、その心地よさに目を閉じれば、熱い息と低く透き通った囁き声が、耳の奥に響いた。
「省吾、大好きだよ」
俺は言葉を返さない代わりに、キスを返した。
今日も。
明日も。
明後日も。
今この瞬間の幸せを抱きしめ続けたら、それはきっと永遠になる。
だからこれからも、何度でも。抱きしめ合って、キスをしよう。
<冬の空:終>
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