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Cheese☆Pizza(社会人五年目:四月)1

 朝一番、ポストから新聞をとってくるのはハルの役目。  新聞ならスマホで読めるだろという俺の意見を押しのけ、紙面に目を通す事が大事なのだというハルの要望で毎月購読している。  日曜日の朝。  早起きのハルに対抗するかの如く毎度のことながらいつまでもゴロゴロと布団にくるまっている俺。  今週は土曜も出勤だったし、昼まで寝ていたい。 「省吾、省吾起きて。ねぇ、これを見て」  元気よく寝室の扉を開けて俺の上にダイブしたハルは、なにやらチラシを手に持っている。 「昨日も働いたし……まだ寝る」 「そう言わず」  いや言わせろよ。  大体疲れて寝おちかけた俺を無理矢理起こしてガンガン突っ込んだのは誰だ。アホみたいに性欲の強い恋人に付き合わされる身をもう少し考えて欲しい。 「ぶつぶついってないでさ、ねぇこれ見てよ」  頭からかぶった布団を引き下ろされ、かわりに先ほどのチラシを突き出され渋々覗くと、どうやら近所のジムの会員募集広告のようだ。 「なんだよもう……ジムの入会? いかねーよ」 「違うよ、これこれ。お試し券がついてるんだ、折角だから運動しにいこうよ」 「ふぅん……いってこいよ」  その間俺は悠々自適に寝ていられる。 「二名様って書いてあるから、一緒に行こう」 「うるせー、いかねー」  再び布団を被り会話を遮断すると、今度はハルがもそりと布団の中へ進入してきた。 「省吾、そういえば最近腕の筋肉落ちたよね」  ぴく。 「前より細くなったよ、仕事忙しいからって運動量減ってるし。名古屋の時は毎週フットサルと、たまにバスケもやってたよね」  ぎく。 「までも俺はいいんだけどね。細いほうが抱きしめやすいし、俺より華奢な省吾ってそそられるし」  ムカ。  言いながらぎゅううと両腕で締め付けられ、骨がミシミシと音を立てた。 「いってぇっつってんだろ馬鹿力!」  結局ハルの調子に流され、昼を待たずにジムへと引きずられる羽目になってしまった。

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