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Cheese☆Pizza 6

 先に着替え終わったハルがいつの間にか消えていて、先に帰ったかなと思いながら髪を乾かしていると、こっちに向かって歩いてくるハルの姿が鏡に映った。  スタスタ歩いてきて隣に座ったかと思うと、手にしていたものを俺の前にコトリと置いた。  珈琲牛乳瓶。  見ればハルは牛乳瓶のフタを開けている。目が合うとニッと口角を上げて目を細めた。 「省吾はそっちだろ」  確かに、選択は正しい。  ドライヤーを置き、俺も瓶のフタを開けで一気に飲み干した。  美味い。 「昼ご飯、何しようか」  当たり前のように問い掛けるハルを鏡越しにチラリと見れば、もういつもと変わらず、柔和な笑顔を浮かべている。 「……ピザ」 「いいよ。ピザとビールにしよう」  今運動した分以上摂取するなと笑いながら。 「腹が減ると苛々するから、俺達はまず昼ご飯にしよう」  腹、減ってる。 「さっきは言い過ぎてゴメンな」  そんな素直に謝られても。 「……別に」  俺も言い過ぎたと、素直に言えない。  何か返すべきかと考えながらとりあえずフタをごみ箱に捨てようと身を屈めた瞬間、ハルの顔が近づき唇が触れた。 「っ……!」  慌てて周りを見回すと、ハルはクスリと小さく微笑んだ。 「誰もいなかったからしたんだよ」  心臓に悪いわ!  バクバクする心臓を押さえながら睨みつけると、ハルは空になった二本の瓶を手に取り立ち上がった。

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