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きみは誰のもの(社会人五年目:GW)1
四月も中旬のある夜。
帰宅するなり悲壮感満点のハルに絞め殺されそうになった。
「く、苦し! は、な、れ、ろ、この!!」
スーツのシワを軽く叩きながら、剥がれたハルを睨みつける。
「帰るなりなんだよ全く。職場で何かあったのか?」
「……今月末は省吾の誕生日が控えている」
「んあ? あー、そうだな」
「なのに急に出張が入った」
「出張? ふぅん、どこに」
「ふぅんて省吾! 誕生日なのに一緒に居られないなんて!」
耐えられないと叫びながらまたしがみついてきたハルの馬鹿力に再び悲鳴をあげる俺。とりあえず落ち着けと引きはがし、ソファに座らせてから俺も隣に腰を降ろした。
「わかった、誕生日は出張から帰ってきたら祝ってくれ。それまで待ってるし。で、いつからどこに行くんだよ」
「二十八日から五月二日。沖縄で開かれる学会に圭介と組んで出席しなくちゃならない」
またサワケースケか。
「そっか、までも仕事だしな、頑張れよ」
ポンと肩を叩くと他人事だなとジトリと睨まれた。いやぶっちゃけ他人事だし。大体これだけ毎日一緒にいて、誕生日だからって絶対一緒にいたいとか思わねぇだろ……。
と心の中で思いながらも、とりあえずハルが喜びそうな言葉を頭から引っ張りだしてみる。
「お前がいないのは淋しいけど、我慢する……」
「省吾! 俺も!」
ガバァと抱き着かれ頬を擦り寄せられながら、ハイハイとハルの背中を撫で、頭の中では久々のひとり時間をどう過ごそうかと、ワクワクしていた。
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