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きみは誰のもの 2

 次の日。  出勤するなり煩い面子の輪の中に引き込まれた。何事かとメンバーの顔をぐるりと見渡すと、朝から誰よりもテンションの高い男、アホ木が満面の笑みで俺の両肩をガッシと掴んだ。 「ねね、香取はGW前半、予定あり?」  弊社の今年のGW連休は四月二十八日から五月六日までの九日間だ。 「GW? 別に……」  する青木の隣に立っている女子社員、ヨーコさんがキャアと声を上げた。 「予定ないなら、沖縄いこ!」 「は?」 「これで人数集まったわね~、決まり決まり」  万事オッケーな顔をして頷いているのは美人だけど気の強い佐倉ねーさん。青木が入社以来憧れ続けている高嶺の花だ。 「行かない。面倒な事に俺を巻き込むな。GW前半はひとりでのんびりする予定なんだよ」  青木の手を振り払い自席へ向かおうとしたところを背後から抱きつかれる。正確には羽交い締めだ。朝からとんでもなく鬱陶しい。 「そういわずに聞いてよ~! なんと沖縄旅行がさ、当たってたの! 大分前に連絡きてたのすっかり忘れててさ。四名様リゾートホテル二泊三日、往復チケット込みですよ、行くしかないでしょ」 「へぇ、そりゃよかったな。他の奴誘って行ってこいよ」  冷たく突き放しても諦める気配のないアホ木。突然首をひっぱられ、ねーさん達から離れた場所まで引きずられた。 「それがさ、俺は勿論万優さんを誘いたいわけなんだけど、他の女の子も一緒じゃなきゃ行かないっていうし、アヤカちゃんは予定あるっていうし、ヨーコさんは香取が行くなら行くっていうからさ~」  ヨーコさんというのは、事務所内の酒好き面子に必ず入る女性社員だ。酔うと絡むし煩いし正直言って大分苦手。 「そりゃタダでも行きたくねーよ。マジ勘弁」 「そこをなんとか! 万優さんと俺の為にどうかお願いします!!」  顔の前で両手を合わせ、お願いしますと繰り返すものだから、周りの社員達に注目され始めた。本当にやめて欲しい。

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