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きみは誰のもの 3
目の前で両手を擦り合わせて拝まれても、嫌なもんは嫌だ。断ろうとした瞬間、青木のつむじを見てふと思い出してしまった。
(そういやこいつには、クリスマスに借りを作ってたな)
俺が終電を逃す事を見込んでハルに迎えにいってやれと連絡をいれてくれたのは青木だった。おかげですんなりと帰宅できた、寒い冬の深夜の出来事。
思い出してしまったらどうにもムズ痒くなり、断れない気分になってしまった。変な所で律儀な自分に頭を抱えつつも、ここは借りを返すべきかと腹をくくる。
「……わかったよ、つきあえばいいんだろ」
「ほんと!? やったあ!!」
「これでクリスマスの借りは返したぞ」
「クリスマス? なんかあったっけ」
青木のキョトンとした表情を見て、しまったこいつに貸し借りの概念はなかったと気づく。
「なんでもいいや、ありがとー香取! 万優さん、ヨーコさん、決まり決まりー!」
キャッキャと盛り上がる三人を眺めながらため息をつき……そこで気付く。
沖縄って、ハルも沖縄じゃねーか。
嫌な予感が頭をよぎったものの、でもまあいくらなんでも沖縄だって広いし、会う事はないだろうと楽観的に考える事にした。
でも無駄に揉めるのも面倒だし、旅行に行くことは秘密にしよう。
そうしよう。
……大丈夫だろ、多分。
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