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きみは誰のもの 4
四月二十八日の早朝。
名残惜しげにぎゅうぎゅうと抱きつかれたあと、車で迎えにきたサワケースケに連れられていくハルを玄関先で見送った。
扉が閉まり、静かな空間にひとり残されてから一息ついたところで、先程見たサワケースケの顔がじわじわと浮かび上がってきた。
数える程しか顔をつきあわせた事はないけれど、いつでも自信に満ち溢れた余裕のある表情で俺を見下ろす。見下している感が半端ない。癇に障らないといったら嘘になるが、それよりもひっかかるのはハルの態度だ。
サワケースケの前では、ハル本来の姿を隠さない。俺にベタベタに甘えてきたり、サワケースケに対して雑に罵ったり、きっと他の人間の前ではそんな姿は見せないはずだ。
あの男の前では素の自分を見せている。それが何を意味しているか、鈍い俺でもわかる。
(あの二人は、ただの同期以上に、親しい間柄なんだろうな)
でもそれについて俺からハルに聞く事はないし、ハルも敢えて俺に話しはしないから、多分きっとそれは聞く必要のない情報なのだ。
寝室へと戻り、適当に着替えをバッグに詰め込み、簡易極まりない旅の準備を済ませた後、ベッドにゴロリと横になる。
旅行の件をハルに秘密にした事はチクリと胸をさすけれど、馬鹿正直に言ったところでハルの仕事の邪魔になっても困る。
あいつのことだから、俺も沖縄にいるなんてわかったら空いている時間に会おうとするに決まってる。
それはそれで面倒だし、あいつにとっても良いことないし。
うん、黙っていて正解だ。
……多分。
飛行機便も別だし、帰る日も別だし、宿泊先も違うホテルだし、まず会うことはないはずだ。
大丈夫。……多分。
◇◇◇◇◇
空港へ着くと、既に青木が待っていた。
「あっ香取おはよー! あれ、荷物それだけ?」
「はよ。着替えだけで十分だろ、他の奴らは」
「まだだよ。ねぇそれより今更だけど、休日の省吾を横取りしちゃってハルは大丈夫かな?」
図ったように今更なタイミングだな。
「あー、あいつも今日から沖縄行ってんだよ、出張で」
青木のでかい目がさらにでかくなった。
そういやこいつって、茶色い目してるよな。色素薄いとかいってたっけ。
「そうなんだ、じゃあ向こうで会う予定?」
「会わねぇよ、てか内緒にしてるし、お前も余計な事言うなよ」
すると青木の目がさらにでかくなった。
どこまででかくなるんだろうこいつの目。
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