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きみは誰のもの 5

 その時、お待たせーと弾んだ声が聞こえて振り返ると、ガラゴロとスーツケースを引きながらバカンス気分たっぷりの装いで姉さん達が現れた。  たかが二泊三日で、なんでそんな荷物あるんだよこいつら。 「ちょっと香取くん、荷物少なっ!」  姉さんに突っ込まれた。  着替え以外に何が必要なんだ。 「出発まで時間あるし、軽く食べようよ」 「あ、空港限定生ビールあったよね」 「いいねー!」  出発前からテンションの高い三人組を傍観しながら、いらぬ義理立てに身を削った事を早々と後悔し始めていた。こいつらのノリについていけそうもない。 「香取くんも、いこいこ♪」  跳ねるようなヨーコさんの声に渋々返し、ついでにやたらとでかいスーツケースを手にしてやれば、キャアと喜ばれた。 「わ、香取くん優しい!」  声でけぇよ。 「別に、俺の荷物ねぇから手あいてるし」  前を見れば、青木は勿論佐倉ねーさんの隣に並び、スーツケースをガラゴロ引きながらキャッキャと歩いている。  冷静に考えたら、さながらダブルデート。  待てよ、なんだこの状況。  絶対ハルには見られたくねぇな。  想像すればゾクリと悪寒が走り、はあとため息をひとつつき、皆の後に続いた。

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