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きみは誰のもの 8

『とりあえず準備に一段落ついたから電話してみた。何か変わりはない?』 「今朝別れたばっかだろが。何もねーよ」  良かったと笑うハル。耳元にくすぐったさを感じる。 『そうだ、手違いがあってさ、宿泊先が変わったんだ』  念のためと、宿泊先のホテル名と住所を伝えるハルの言葉を聞きながら、ここから案外近いんじゃねぇかとヒヤリとなる。あとで地図を確認しておこう。 『明日は一日学会だから……』  言いかけたハルの声の後ろから、打ち合わせ始めるぞと声が聞こえてきた。  サワケースケか。  その声に今行くと返してから、じゃあ切るよとハル。まだ一言二言しか話してないじゃねぇか、などとは決して口に出しはしないけれど。 「仕事頑張れよ」 『うん、また連絡する』  サクッと通話が途切れた後、何だかシュンと淋しくなった。  なんだこれ。やっぱ疲れてんだな。  飯の前に一眠りしておこうと再び瞼を閉じ、それからすぐに眠りについた。

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