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きみは誰のもの 13
「ハル……」
「そう、香取のハルくんだよー」
ハル、……会いたいな。
「わ、ちょっと、俺に抱きついて甘えないでよ、香取くーん?」
煩い、黙れ。
俺は今ハルの事を考えているんだから。
口を開けば好きだ好きだと甘い顔をするハルを思い出す。
そういえばあいつ。
俺の何が好きなんだろう?
俺は、男だし、かわいげもないし、何かすごい才能があるわけでもない……。
(ちゃんと聞いた事、あったっけ……)
俺は?
どうしてハルを、好きになったんだったかな……。
「はい着きましたよー」
カードキーで鍵を開ける音が静かな廊下にカシャンと響く。
「よ、い、しょっ! はあー疲れたー」
ベッドへ降ろされて直ぐに隣に倒れ込んだ青木の気配を感じ、薄目を開ける。
「青木……」
「んー」
「喉渇いた」
「……ハイハイ」
冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、キャップをあけてからベッドサイドに置いてくれた。
「酔っ払いの香取は可愛いけど危なっかしいなあ。さっきもハルの事、ペロリと言いかけるし。別に良いんだけど、起きたら香取が頭抱えるの目に見えてるしねー」
「……知らね」
「恋人よりもっと大事だなんて言っちゃうんだもんなあ。ハルが聞いたら泣いちゃいそ」
クククと思い出し笑いをしながら俺の髪をいじる青木の手を振り払いたいのに身体に力が入らず、面倒になって放置したまま目を閉じた。
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