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きみは誰のもの 20
繁華街から郊外を抜け、海沿いを走り、山中へと坂道を登り。
気付けば再び海岸沿いの一本道へと戻っていた。
記憶を頼りに向かった先へは辿り着けそうもない。
「……だめだ、やっぱわかんね」
ガキの頃の記憶なんてこんなもんか。
ひとつひとつの景色は思い出せるのに、それがどうしても地図に結びつかない。
(方向感覚ねーしな……)
コンビニの駐車場へ車をとめ、購入したペットボトルのコーラを一気に喉へ流し込み、炭酸で思い切りむせ返った。
夢みたいに綺麗な海の青に吸い寄せられるように、砂浜へと続く小さな階段をゆっくりと降りる。砂の感触を足に感じたらなんだか寝転びたくなり、そのままゴロリと身体を砂浜に預けてみた。
どこまでも広がり続く空の青を眺め、ふうと一息つく。
「おばあの墓参り、したかったんだけどな」
道路も町並みもすっかり変わったけれど、この海の青と空の青は変わらないなとひとりごちながら、指先に触れた珊瑚のかけらをひとつ手にとり。
「……なんだ、これ」
記憶の中の砂浜は、真っ白な珊瑚のかけらでいっぱいだった。
それを沢山拾い集め、庭にしきつめて喜んだ事を思い出す。
けれど、手にとったこれは、とても同じ場所にあるものとは思えない程、全てが薄いグレーに染まっていた。
東京の海と比べたら夢みたいに綺麗なこの海も、時間とともに確実に汚染されているという現実は、俺の中でずしりと音をたて地に沈んでいく。
「……二十年近くもたってるんだもんなあ」
俺は珊瑚のかけらを砂浜へと戻し、ゆっくりと身体を起こしあぐらをかいて、再び海の先をぼんやりと眺めた。
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