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きみは誰のもの 22

 四十九日を終えた後、母ちゃんはおばあの位牌をしまった小さなバッグひとつをかつぎ、ガキんちょの俺の手を引いて、さあ行こうかと言った。  どこへ行くのと聞けば、東京だよと明るい声が返ってきた。  俺は母ちゃんの手をぎゅうと握り締め、幼いながらにこの手は絶対に離さないと心に誓い、二人でこの地を後にした。  それから東京で少し、その後はずっと神奈川で暮らし。  晃たちと出会い、友達も出来て。  それから、ハルに会えた。 (あの日沖縄を飛び立ってから、もう二十年近くも時が流れたんだな)  いろんな事があって、いろんなもんが変わって、多分俺も変わって。  だけど、昔も今もずっと変わらないものもある。  形を変えながら、でもずっと変わらないもの。  ぼんやりと懐かしい記憶に浸っていた俺は、背後から駆け寄ってくる足音に気付かず、突然背後からモコモコしたものに飛びつかれて思わず声を上げた。 「わあっ!」  驚いた拍子に体制を崩し、砂浜へとひっくりかえった俺の上に重いものがずしりと乗っかってきた。 「ワンワンワン!」  砂まみれの俺の顔に塗れた鼻を押し付けてきたものは、丸々と太った毛の短い茶色の犬。  短い尻尾をちぎれそうな程に振りまくる姿はとても憎めない。 「なんだお前、デブ犬だな」  そういや隣んちのタロもデブ犬だったなと思い出し、妙に懐かしさを感じて頬が緩んだその時、すみませんと声を上げながらこちらへ向かってくる人影が視界に入ってきた。散歩紐を握り締めながら、真っ赤な顔してこっちに走ってくる髪の長い女。 「う、うちのジロがすみません! こらジロ、離れなさいってば」  俺の脇腹に鼻をこすりつけていたデブ犬は、ジロという名前らしい。飼い主に抱きかかえられてもなお、ワフワフと息を荒げている。

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