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きみは誰のもの 24
結果的に、ジュン兄との偶然の再会は俺にとって幸運だった。
おばあの墓まで案内してくれたジュン兄に礼を言うと、私も久々に来れて嬉しいと笑う。
……どっからみても、可愛い女じゃねーか。
二十年の重み、すげぇ。
「ここもだいぶ変わったでしょ」
色々便利になったんだよと兄。
「んー、だな」
高台に構える香取の墓は、眼下に広がる海を一望出来る絶景の立地。
花を添え、ジュン兄とジロと俺は石段に並んで座り、穏やかに広がる海を眺めた。
「ジュン兄は今も実家で暮らしてるのか」
「ん、出てたんだけどねー。ちょっと前に仕事辞めて、帰って来たばかり」
「ニートかよ」
「やだ傷つく事言わないでー。省ちゃんは今何してるの」
「営業」
「そっかあ、あのちびこかった省ちゃんが社会人でサラリーマンかあ」
驚いた顔してるけど、驚き度は多分俺の方が全然上回ってると思うぜジュン兄。
「香取の家さ、今はおばちゃんのお兄さん家族が住んでるよ」
「ふぅん」
「行くなら案内するけど」
「いかね」
「そっか」
ジュン兄はジロの頭を撫でている。
「……こいつもデブ犬だな」
俺が言うとジュン兄は笑った。
「タロは十八年目の冬に老衰でね、うん、長生きしてくれたよ。この子はそれから二年後くらいかなあ、役場で処分されかけてたところを引き取ったの。タロの弟って事で、ジロ」
ジロは目を閉じて、ジュン兄の足元に寄り添っている。その姿を見てふと、あ、ジュン兄だなと、すっと胸に入ってきた。
タロを可愛がっていた優しい兄ちゃんが、俺は大好きだった。
「それにしてもあれから一度もこっちへ帰って来なかったなんて、冷たいな。私はずっと会いたかったんだよ、省ちゃんが突然居なくなった時は、悲しくて悲しくてたまらなかった」
瞳を潤ませながら見つめないでほしい。
女にしか見えねーからマジで。
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