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きみは誰のもの 26

「タロが車にはねられた時も、泣くだけの私の背中を叩いて、タロを抱きかかえて病院まで走ってくれたの、めちゃめちゃかっこよかった」 「……んなこと、あったか」  ほんとは、覚えてる。  タロが死んじゃうんじゃないかって、すっげ怖かった。だから必死で病院のじーちゃんとこに走った。それだけだ。 「他にもいっぱい。省ちゃんは私にはない強いものを、沢山持ってたから……好きだったなあ」  二十年近くも昔の自分を好きだったと今言われても、どんな顔したらいいんだよ。恥ずかしすぎるだろ。 「……で、今はいんの? ツヨイ彼氏」 「んー、いるよ! めちゃめちゃ大好きなヒト」  なるほど。やっぱりカレシなのか。 「そか、そりゃよかった」  残り少なくなったさんぴん茶を一気に飲み干し、ふうと息を吐いて隣の視線に気付く。 「今度は何だよ?」 「やっぱり、省ちゃんだと思って」  また訳のわからねぇ事を言い始めた。 「私、子供の頃から女の子ぽかったから、からかわれる事も多かったんだよね」 「そうだったっけ?」  そんな記憶ないなと首を傾げると、ジュン兄は笑った。 「省ちゃんの良いとこって、ほんとそういうとこ。まんまを見てくれるから、偏見とか違和感とか持たない人」 「そりゃ良い方に捉えすぎだろ。別に俺は、誰がどうでもあんま興味ないってだけだ、昔から」 「ふふ、そっか。でもまんまを受け入れて貰えるって、それだけで力貰えるんだよ」  それを言うなら、俺の方が。  クラスの奴らからはぶられても、ジュン兄が遊んでくれたから、俺は楽しかったんだ。 「高校の時にね、男の子が好きってばれちゃって、虐められた事があったの」  俯きジロの頭を撫でながら、ジュン兄はポツリと言った。

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