337 / 428

きみは誰のもの 27

「あの時、省ちゃんが居てくれたらなあって思ったんだ。省ちゃんだったらきっと、私をそんな目で見ないのになって」  それからぱっと顔を上げ、ニコリと微笑んだ。 「やっぱりそうだった」  そうだったとか自己完結されてもな。  勝手にしてくれとしか言いようがない。 「……でも俺はいねーし、ジュン兄は大丈夫だったのかよ?」 「うん、その時、私のまんまを受け入れて、理解してくれた人が、今の私の一番大切な人」  ハニカミ笑顔を見ながら、成る程と思わず俺の頬も緩む。  ああ、そうか。  幸せなカオって、伝染るのかもしんね。 「ね、省ちゃんは? いるの? 可愛い彼女」  興味深々な表情で覗かれ、思わず言葉に詰まる俺。 「あ? ああ……」 「あーやっぱりいるんだ! ねぇ、どんな娘?」  どんな娘って。  ふと朝目にしたハルを思い出し、途端に胸がきゅうと痛みだした。  無意識に胸を押さえた俺に気付いたジュン兄が、どうしたのと肩を掴む。 「可愛いくはねーな……」 「何それ省ちゃんひどーい!」 「はは、それにたまに悪魔みたいに怖えぇ」 「あはは、そんなに怖いの」 「でも俺以外の奴に笑ってるだけでムカついてくんの、重症だろ俺」 「そう? 普通だよ」  ポンと頭に手を置かれ、よしよしと撫でられた。  普通だったらキレるところなのに、今はちっとも嫌じゃなくて。  ただ妙に恥ずかしくなって、されるままに俯いた。 「省ちゃんその娘の事、大好きなんだねー」 「……うん、すげー好き」  何でこんなに、素直に答えてるんだ俺。相手がジュン兄だからか。 「でも、彼女じゃねー」 「ありゃ、そうなの?」 「男だから、彼女じゃない」  他人に対して、初めて口にした言葉。  こんなに素直に言えるなんて、思わなかった。

ともだちにシェアしよう!