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きみは誰のもの 27
「あの時、省ちゃんが居てくれたらなあって思ったんだ。省ちゃんだったらきっと、私をそんな目で見ないのになって」
それからぱっと顔を上げ、ニコリと微笑んだ。
「やっぱりそうだった」
そうだったとか自己完結されてもな。
勝手にしてくれとしか言いようがない。
「……でも俺はいねーし、ジュン兄は大丈夫だったのかよ?」
「うん、その時、私のまんまを受け入れて、理解してくれた人が、今の私の一番大切な人」
ハニカミ笑顔を見ながら、成る程と思わず俺の頬も緩む。
ああ、そうか。
幸せなカオって、伝染るのかもしんね。
「ね、省ちゃんは? いるの? 可愛い彼女」
興味深々な表情で覗かれ、思わず言葉に詰まる俺。
「あ? ああ……」
「あーやっぱりいるんだ! ねぇ、どんな娘?」
どんな娘って。
ふと朝目にしたハルを思い出し、途端に胸がきゅうと痛みだした。
無意識に胸を押さえた俺に気付いたジュン兄が、どうしたのと肩を掴む。
「可愛いくはねーな……」
「何それ省ちゃんひどーい!」
「はは、それにたまに悪魔みたいに怖えぇ」
「あはは、そんなに怖いの」
「でも俺以外の奴に笑ってるだけでムカついてくんの、重症だろ俺」
「そう? 普通だよ」
ポンと頭に手を置かれ、よしよしと撫でられた。
普通だったらキレるところなのに、今はちっとも嫌じゃなくて。
ただ妙に恥ずかしくなって、されるままに俯いた。
「省ちゃんその娘の事、大好きなんだねー」
「……うん、すげー好き」
何でこんなに、素直に答えてるんだ俺。相手がジュン兄だからか。
「でも、彼女じゃねー」
「ありゃ、そうなの?」
「男だから、彼女じゃない」
他人に対して、初めて口にした言葉。
こんなに素直に言えるなんて、思わなかった。
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