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きみは誰のもの 28
「えぇー!?」
突然叫ばれ、ぎょっとして振り返ると、ジュン兄がこれでもかってくらい目を見開いて俺を見つめていた。
「あー! なんかそれすごい悔しいかも!」
「は?」
「だって、省ちゃんが男の人とお付き合いしてるなんて! 可愛い女の子だったら諦めもつくけど、なんていうか、なんていうか悔しい!」
手足をジタバタさせて悔しがってる意味がまるでわからねーよ……。
「なんだそりゃ。ジュン兄、彼氏いるっつーてただろ」
「そうだけどそれとこれとはまた別なの、なんていうの、この女心」
「……」
絶対わかんねーし付き合ってらんね。
「ね、写真見たい!」
「写真なんて持ちあるかねーよ」
「写メとかあるでしょ一枚位」
ねーよと言ってからハタと気付く。
そういや出かけ先で写真をとるのはいつもハルで、俺はいつもそれを横から見て終わりにしてたな。転送するといわれても、要らないと言って取り合わなかった。
ハルなんてアホみたいに、待受画面まで俺との写真にしてるのに。
(いやそれもどうかと思うよな、あいつは行き過ぎだ絶対)
「ねぇ、ホントに一枚もないの?」
「……ない。てかジュン兄は持ってんのかよ」
「あったり前じゃん、待受だってこれだよー、ほら」
ニヨニヨしながら目の前に突き出されたスマホの壁紙は、頬をベッタリ摺り寄せ合うジュン兄とイカツイ坊主の男。
……バカップルだ。
見たかったなあとボヤくジュン兄を横目に見ながら、まあでも幸せそうでなによりだなと頬が緩んだ。
そうか……俺も一枚位は持っていようか。
(でも待受なんてしないけどな絶対)
「まあでも、省ちゃんが幸せそうでよかった」
俺の肩に身体を寄せ、ふふふと笑うジュン兄。
「ジュン兄もな」
俺も何だか笑いが込み上げて来て、ジュン兄の肩に寄りかかり、少し笑った。
穏やかな海を眺めながら、今日ここに来て良かったと思った。
おばあが引き寄せてくれたんだろうか。
また、来るよ。
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