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きみは誰のもの 32

 ロビー奥のエレベーターが開き、はじかれたようにこちらへ向かって一直線に駆けてくるハルの姿が目に入り、途端に心臓が跳ね出す自分に戸惑う。  もう毎日飽きるほど顔を突き合わせているというのに、いざとなるとこんなにも緊張するものか。  大きく息を吸い込み、吐き出したところで、ロビー扉をくぐり駆け寄ったハルが俺の前で足を止め、乱れた息を落ち着けながら、食い入るように俺を見つめた。  なんだよ、昼間もあったなこんな事。 「十秒経ってるぞ」 「ほんとに……省吾だ……」 「偽者とかあんのかよ」 「だ、だって、なんで沖縄に」 「いや、なりゆきで職場の奴らに……」  言いおえるより先に、ぎゅううと強く抱きしめられた。 「わっ! おまっ、ここ外」  両手足をバタつかせてなんとか引き剥がそうとしても、タコの足みたいに巻き付いたハルの両腕は離れやしない。  正面のロビーから丸見えの状況で、うっかりキスでもされたら最悪だ。 「ロビーから丸見えだっての! 離せって」 「凄い……」 「何がっ」 「会いたいと願ったら、来てくれた……」  さらに強くだきしめられ、完全に身動きが取れなくなった俺は仕方なく腕を下げて口を閉じた。  ああ、もう。  だからお前はなんでそんなに。    

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