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きみは誰のもの 34

 額を寄せ合い、ハルが囁く声を聞くのが好きだ。その声は低く静かに響き、俺の身体の中へゆっくりと浸透していく。 「誕生日おめでとう、省吾」  照れ臭くて下を向けば顎を引き上げられ、視線が重なると嬉しそうにまたキスをされた。額から瞼、鼻先、頬、唇から首筋を通り、鎖骨へ。ハルはいつも、流れるようにキスをする。俺の全てが好きだと、全て自分のものなのだと、言われているようでくすぐったい。そんなハルを、愛しいと思う。ハルの柔らかな髪に指先を通しながら、俺は頬を緩めて小さく笑った。 「これからしばらく俺の方が年上だ」 「そうだね」  そう言ってもう一度唇を重ねた後、ハルの身体が離れたので、俺もむくりと身体を起こした。  鞄を漁るハルの背中に何やってんだと声を投げると、それからすぐに戻ってきた。手の平には小さな箱。 「二十七歳の省吾へプレゼント」 「……何で今出てくるんだよ?」 「すぐに渡せるように、肌身離さず持ち歩いていたから」  開けて開けてと急かすハルに押されて小さな箱の蓋を開けると、現れたのは銀色に輝く指輪だった。俺が二月にプレゼントしたものと同じものだ。  ああ、やっぱり。  あれ程お揃いは嫌だと切実に訴えていたのに。  お前は本当に曲げない奴だな。  仕事で指輪なんか出来ないし。 「毎日つけて貰えるように、チェーンも一緒。ね?」  ほらともう一つ箱を取り出し、中にはこれまたお揃いのチェーン。  完全お揃いじゃねぇか。  恥ずかし過ぎて、頭から火が出そうだ。  ああ、でも、これがこんなに。  嬉しいなんて、思わなかった。

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