344 / 428
きみは誰のもの 34
額を寄せ合い、ハルが囁く声を聞くのが好きだ。その声は低く静かに響き、俺の身体の中へゆっくりと浸透していく。
「誕生日おめでとう、省吾」
照れ臭くて下を向けば顎を引き上げられ、視線が重なると嬉しそうにまたキスをされた。額から瞼、鼻先、頬、唇から首筋を通り、鎖骨へ。ハルはいつも、流れるようにキスをする。俺の全てが好きだと、全て自分のものなのだと、言われているようでくすぐったい。そんなハルを、愛しいと思う。ハルの柔らかな髪に指先を通しながら、俺は頬を緩めて小さく笑った。
「これからしばらく俺の方が年上だ」
「そうだね」
そう言ってもう一度唇を重ねた後、ハルの身体が離れたので、俺もむくりと身体を起こした。
鞄を漁るハルの背中に何やってんだと声を投げると、それからすぐに戻ってきた。手の平には小さな箱。
「二十七歳の省吾へプレゼント」
「……何で今出てくるんだよ?」
「すぐに渡せるように、肌身離さず持ち歩いていたから」
開けて開けてと急かすハルに押されて小さな箱の蓋を開けると、現れたのは銀色に輝く指輪だった。俺が二月にプレゼントしたものと同じものだ。
ああ、やっぱり。
あれ程お揃いは嫌だと切実に訴えていたのに。
お前は本当に曲げない奴だな。
仕事で指輪なんか出来ないし。
「毎日つけて貰えるように、チェーンも一緒。ね?」
ほらともう一つ箱を取り出し、中にはこれまたお揃いのチェーン。
完全お揃いじゃねぇか。
恥ずかし過ぎて、頭から火が出そうだ。
ああ、でも、これがこんなに。
嬉しいなんて、思わなかった。
ともだちにシェアしよう!