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きみは誰のもの 36

 膝の上で握りしめていた俺の拳がハルの大きな手の平に包み込みまれる。 「省吾、どうした?」 「でも、それじゃ駄目だ。俺はもう無理だ」 「無理って、何が」 「上手く言えない、黙って聞け」  開きかけた口を閉じたハルは、怒ったような、不安そうな表情で俺を見つめた。俺は握られていた拳を解き、かわりにハルの指に自分の指を絡めて強く握りしめると、ハルの視線がそこへ落ちた。 「もうこれより無理言わねぇから、頼む」  手が震える。ハルはそれに気付いたのか、俺の手の甲をじっと見つめて動かない。心臓が激しく音をたて、額からジワリと汗が浮かんできた。  黙って動かなくなった俺に気付いたハルが、ゆっくりと視線を上げる。 「お前の一生を、俺にくれ」  驚いた表情のハルは困ったようでも、引いてるようでもなく、ただ、固まったまま。  一番言いたかった言葉を言えた俺は、堰を切ったように言葉を続けた。 「俺の人生にお前が居ないなんて無理だ、ずっと一生、一緒にいたい。俺はお前と家族になりたい、今すぐじゃなくてもいい、でも……」  一生、なんて。重いよな。言ってる俺が重い。でも。  ハルは泣きそうな顔をして、それから泣きそうな顔のまま、笑った。 「省吾、それは省吾の一生を俺にくれるって事」  改めてそうかそうだなと納得した所で、ハルの両腕に引き寄せられ、強く抱きしめられた。 「一生、俺のものだ……」  ハルの言葉に、泣きそうになった。  一生。  重くても、一緒に背負えるなら。  歩いていけるだろう?

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