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きみは誰のもの 39
明日も仕事のハルを先にシャワーへ押し込み、交代で俺も軽く浴び部屋に戻った時には、ハルはベッドの上でスヤスヤと寝息をたてていた。
ハルが寝落ちするなんて、相当疲れてたんだろうな。
布団を被せ、空調を二十七度に設定する。まだ少し濡れたハルの髪を撫でて、起きないようにそっとキスをしてから、静かに扉を開けて部屋を出た。
エレベーターを降り、静かなロビーを横切ろうとした時、見知った姿が目に入り、ギクリと足を止めた。
ロビーのソファに座りモバイルパソコンを叩いていた男は、俺に気付いて顔を上げると、目だけでフッと笑った。
「思ったよりお早いお帰りで」
サワケースケ。
「……なんでこんなとこ居るんだよ」
「隣の声を聞かされるのもどうかと思ってね」
サワケースケはソファから立ち上がり、何も返せずにいる俺の前で足を止めると囁くように言葉を続けた。
「まあ俺はどこでも仕事は出来るし、睡眠時間も短いからね、俺の事はどうでもいい。けど困るな、ハルにとっても明日は大事な学会の最終日なんだ」
言葉の出ない俺を上から見下ろすサワケースケの表情から笑顔が消えた。
「こんな時間にこんな所まで来てハルを疲れさせるなんて、賢くないね? これで明日ハルがミスでもおかしたら、君は責任を取れるのか」
サワケースケの指先が、俺の胸を軽く突く。
「ハルの足を引っ張るだけの、お荷物だね」
サワケースケの言う事は、間違ってない。
けど。
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