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きみは誰のもの 44
ギョッとして思わず無言で距離を離した俺に、再びクックと喉を鳴らすサワケースケ。
「そう、あの時俺を睨みあげたショウゴの目がね。野生の黒豹のように艶やかで、下半身にぎゅんと来た」
「……は?」
言いながら更に詰め寄られ、挙句にテーブルにもたれていた腕を掴まれた。
ちょっと待て。この展開はおかしくないか。冗談だろ。とんでもねぇ。
「確かに、ハルが調教して手放したくないと執着するのもあながち解らなくもない」
調教って何だこの野郎。
がその前に、ムカつくよりもまずこの状況を回避したい。
「どうでもいいわ、この手を離せっ」
力一杯振りほどこうにも離れないって、こいつもハルも何なんだ馬鹿力!
「大声出したらハルが心配して起きちゃうんじゃないかな? 人の話は最後まで聞こう」
掴まれた腕に痺れが走る。
「実はあの夜、ショウゴの目を思い出して思わずヌイてしまってねー」
アハハって。いやホントに聞きたくねぇよマジで!
「お、お前っ、ハルの事が好きなんだろうがっ」
いやハルは俺のもんだけれども。それよりも今はそれぞれの立ち位置の確認をさせてほしい。
「勿論だ。俺にとってハルは唯一無二の存在だ」
ほっ。じゃなくて。
「じゃ俺で抜くとか言ってんじゃねーよっ、てか近寄るな!」
「ハルが執着するショウゴに俺も興味が湧いてきた」
勘弁。冗談だと言ってくれ。
手にしていたマグカップをテーブルに置き、正面からサワケースケを睨み付けた瞬間。
軽やかに、唇が唇に触れた。
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