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きみは誰のもの 45
「子供みたいなキスでそんなに真っ赤になるなんて、予想以上に興味深い」
普通にみれば整ったサワケースケの顔が、ニイと意地悪気に笑みを浮かべる。
こいつ……信じらんねぇっ!!
「ひ、ひとを実験動物みたいに云うなっ、とっとと帰れ!」
やっと帰る気になったのか、掴んでいた手を離し、カップをテーブルへと静かに置いた。
「ご馳走様。今のはハルには内緒にしておくよ」
あ、ったり前だ、云えるかー!
「大事なハルに秘密が出来ちゃったね」
口を開いたら怒鳴り返してしまいそうで、無言で睨み付けたままの俺の脇を通り抜けリビングを後にしかけたサワケースケが、思い出したように振り返った。
「最終日のハル、プレゼンもスピーチも完璧だったよ。ショウゴの言った通り」
「……」
「この先もお荷物にならないといいね」
最後まで笑顔のまま、サワケースケは玄関の扉から出て行った。
『ハルに秘密が出来ちゃったね』
最悪だ。事故だろう、どう考えても。こんな事でハルに秘密を作るなんて、最悪だ。
(でも、言いたくない……)
溜め息をひとつ吐いてから冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターを取り出しグラスへ注ぐ。それを手に持ち寝室へと戻ると、静かな寝息が聞こえてきた。
(よかった、寝てる……)
いつものハルだったらきっと起きてた。
具合の悪いハルで良かったと思ってしまった自分に舌打ちをして、ベッドの脇にそっと腰掛けた。
じっと寝顔を眺めて居たら、何だか無性に触れたくなって、ついでに眠気も上がってきて、ゴソゴソと布団に潜り込み、ハルの身体に額を押し当てたまま目を閉じた。
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