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きみは誰のもの 47

 ベッドに沈んだハルの上にまたがり、まさかともう一度目を見開いて確認してみても、やっぱりある。 「省吾、って、わっ!」  履き途中だったハルのジーンズを下着ごと引き抜くと、さすがにハルが慌てて身体を持ち上げた。 「まさか省吾から襲ってくれる日が来るとは思わなかった」 「なんだこれはっ」 「え?」  脇腹から下肢にかけて、それはまるで散る花弁のように、ハルの白い身体にくっきりと残された印。  ご丁寧に内腿の付け根にまで、存在を主張するかのごとく散りばめられている。  まじまじとそれを見つめたハルの表情が固まり、なんだこれと呟いているけれども、それはこっちの台詞だ。 「嫁になるっつーた直後に浮気とかお前ふざけんな」 「ちょ、待った、そんな事するわけないだろ!」 「虫にさされたとかアホな嘘つくなよ」 「いやほんとに記憶がない!」 「酔っ払って酒豪のおっさんにやられたんじゃねーだろうな」 「怖い事言うな! 確かに記憶が飛ぶほど飲まされたけどまさか。圭介とタクシーに乗りこんだ記憶はあるし……」  いいながらハルの声が小さくなっていく。もしやと想像したんだろうな、そうだろ。  はなからお前が浮気するなんて思っちゃいねぇよ。わざわざ俺の怒りを煽る様なこれみよがしの痕跡残し。  俺にはサワケースケの、人を見下したあの笑い顔が思い出されてしょうがねぇ。 「悪戯されるほど酔っ払ってんじゃねぇよ!」  この際自分の事は完全棚上げだ。  ハルも黙ってうなだれているけど、そんなんでこの怒りが収まるか。 「お前は俺のもんなのに……」  そこまで呟き、ハルの顔に視線を戻して思わず固まった。  こ、こいつ。 「なんだその嬉しそうな顔はっ!」 「だって省吾が、俺のもんだなんて」 「今そこに食いつくんじゃねー!」  

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