361 / 428
きみは誰のもの 51
リビングテーブルの上で揺れるスマホを手に取り、眉間にシワをよせるハル。チラリと俺を見た顔で、相手はサワケースケだろうとわかる。
俺は知らぬ振りをして、食べ終えた食器を手に立ち上がり、シンクへと移動した。
「はい……圭介お前、その前に俺にいう事はないのか」
リビングの声なんて丸聞こえ。俺は蛇口をひねり、食器を洗い始めた。水音の隙間から聞こえてくるハルの声に思わず耳を傾けてしまう。
「経緯を省くな、なに? ……それは悪かったけど、何でそうなるんだっ……ふざけるなっ! 誰がかわるかっ」
ハルが声を荒げたところで静かになり、まあ予想通りだったなと思いながら食器を洗い終え、蛇口の水をを止めた時。
「省吾、圭介が省吾にかわれと煩いんだけど……どうする?」
は?
話す事ねーよと言いかけてから、あからさまに出て欲しくないという表情のハルに気付き、ふと考え直す。
この時の俺は、ハルが嫌がる事をしてやろうと思ってしまったんだ。後で後悔するなんて、少し考えたらわかる事なのに。
「……出る」
うっと言葉に詰まったハルからスマホを受け取り、キッチンへ向かって歩きながら耳に当てた。
「何の用だ」
『先程はご馳走様。ハルの体調も良くなったようでよかった。仲良くセックスも楽しんだかな?』
耳障りな程陽気な声に苛立つ。
「あんたと雑談なんてする気はねぇよ、用件を言え」
チラリとハルの姿を確認すると、既にダイニングテーブルに戻り、歯ぎしりをしそうな勢いでこちらをじっと見つめている。いやそれ見過ぎだろ。
俺が作ったそばを放置してんじゃねぇよ。
冷蔵庫から缶ビールを取り出し、プシュリと開けたところで、サワケースケが再び口を開いた。
『あの印は、ハルとショウゴへのプレゼントのつもりだったんだけど、気に入ってもらえたかな』
「お前、今度会ったらマジで一発殴らせろ」
ともだちにシェアしよう!