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きみは誰のもの 52

『はは、怒ったならゴメンね? 俺が介抱して着替えさせてるっていうのに、ハルがショウゴの名前ばかり繰り返すもんだから、つい虐めたくなっちゃってね』  俺と二人でいるのに酷いだろうと笑う。  このままスマホを投げてしまいたい衝動にかられたが、そういやハルのだと思い出し、辛うじてとどまった。 『あ、でもそれ以上はしてないよ? 動かない人形を犯すなんて、趣味じゃないからね』  ハルと同じ事を言っている。こいつら……。 「あんたの趣味なんてどうでもいい。今後一切仕事以外でハルに近づくな、約束しろ」 『そんな約束は出来ないな……でも、今までよりも少し距離を置く努力をしてみてもいい』  予想外の譲歩交渉に一瞬動きがとまる。ハッとしてハルを見れば、俺の声が聞こえていたかはわからないがジトリとこちらを見つめていて、俺は何事もないように背を向けた。 『ショウゴは、ハルと俺がいつから知り合いかすら知らないんだろう』 「……んなもん興味ない。同期だろ」  電話の向こうでクスリと笑いが漏れたのがわかり、苛立ちが募る。缶ビールを喉に流し、このまま電話を切ってしまおうと思った瞬間。 『俺はハルが中学生の頃から面倒を見ているから、もう十年以上の付き合いだ』  ゴクリと喉を鳴らした後、じわりと苦味が広がる。

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