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きみは誰のもの 58
「にしてもお前、男とシェアとかよくやってるな。お互い彼女とか部屋に呼んだり出来てんの?」
完治の問いには答えず、運ばれて来たチーズを口に放り込む。
完治も皿に手を伸ばしてアーモンドを口に放り込み、コリコリと音を立てながら、そういえばと口を開いた。
こいつは昔から、質問しても返事がなければさっさと話題を変える。
こういうところが長く付き合えている理由のひとつかもしれない。
「この間、省吾の母ちゃんにあったぞ。相変わらずお前の母ちゃん綺麗だよなあ。うちの母ちゃんなんてやばいぜ、年々体重増加していく姿がこわすぎる」
「うちの母ちゃんは良いもん食ってねぇから太らないんだよ」
昔、連日モヤシを食べさせられた記憶が蘇ってきた。
「はは、それでさ、お前の事ボヤいてたぞ」
「は、何で」
「お友達と同居なんて始めて、ありゃ結婚なんてまだまだだってさ」
ケラケラと笑う完治を軽く睨み、お前だってまだ先だろと言い返すと。
「いや、そろそろな、考えてるんだよな実は」
「は? 浮気してキレられたとか言ってる奴が」
「そうそう、遊ぶのも最後だーと思ったら速攻バレたってオチ」
アホだなと返すと、正直かなり反省してるんだってばと明るく返ってきた。
「この年になってくるとさ、やっぱり俺でも思えてくるもんなんだよな」
「何が」
「嫁とか子供とか、自分の家族、作りたいなとかさ」
ヘラヘラと笑う完治から目をそらし、空になったグラスをカウンターに置く。現れた店員に同じものを頼み、アーモンドを口に放り込んだ。
噛み締めるとほんのり苦味が広がる。
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