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きみは誰のもの 62

 ほんのちょっとでも。  母親の期待に応えられそうもない自分に、引け目を感じた。流れるままに笑って未来を語る友達を、俺は羨んだ。  ハルが自分の事よりも、俺のために何かをしてくれている時に、俺は他人の人生を、一瞬でも。  羨ましいと、思ってしまった。  俺の幸せは、ここにこんなにちゃんとあるのに。これ以上何を望む。 「省吾、触れてもいい?」  遠慮がちなハルの声。  キレると鬼みたいなくせに、こんな時はどこまでも優しい。 「……さわんな」  左腕で乱暴に目を擦り、俺の顔を覗き込むハルの顔を理不尽に睨みつければ、それが可笑しかったのかクスリと笑うハル。 「お腹空くとさ、人間て簡単に情緒不安定になるもんだよ。だから早く、ご飯にしよう?」  無駄につっかかる時もあれば、こうやって笑って受け流す。  出会った頃から、変わらない。  小さくゴメンと言いかけたその時、インターホンが鳴り宅急便屋の声が聞こえてきた。 「何だろう? 省吾は手を洗っておいでよ」  ハルが玄関へと消えた後、俺は洗面所へ向かい、顔と手をジャバジャバと洗った。  戻るとリビングテーブルの上には、大きな段ボール箱。 「省吾のお母さんからみたいだよ」  送り主は確かに俺の母親の文字。  箱を開けると中には生活に必要な物資がぎゅうと詰め込まれていた。  米、醤油、缶詰、洗剤、それからチョコレート。  一番上には手紙が一枚。 『誕生日おめでとう。長生きしてね』  思わず吹き出した俺を見て、ハルも笑った。 「用意しておくから、電話してきたら」

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