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きみは誰のもの 67

「はい、ケイちゃんから」  マスターが目の前に氷の入ったグラスを置いてくれた。華やかに香る透明の液体。ジン・ロックだ。  隣を見るとサワケースケも同じグラスを手にとり、目があうとニコリと微笑んだ。飲めと言う事か。  口に含めば強烈なアルコールに、うっと詰まったが慌てて飲み込む。俺にはきつすぎる。けれど視界の端に映るサワケースケの表情にムカついて、無理矢理もう一口喉へと流した時、マスターが口を開いた。 「遠距離恋愛の恋人が帰ってきてから、パッタリ来てくれなくてね。最後に顔出してくれたのって、去年の秋だったかな?」  顔を上げるとニコニコしながら俺を見つめるマスター。  三十代前半だろうか。線が細くて肌が白くて、切れ長の目がスッキリしていて、人好きのする笑顔。綺麗な人だなと思った。 「秋からショウゴと暮らし始めたからね」  サワケースケが答えると、若い店員が、ケイちゃん悔しがってたもんねとからかう。  なんと会話したら良いかわからず、黙ってもう一口含むと、さっきまでキツイと感じていたアルコール臭は和らぎ、ジンの香りに心地良さを感じて来た。 「ケイちゃんが初めてここにハルを連れて来たのは大学二年の頃だったかな、居心地が良かったみたいで、それからよく二人で来てくれてね」  はぁと小さく相槌をうつと、マスターはニコリと微笑んだ。 「ハルは大抵聞き役に回る事が殆どだけど、こっちがしつこく問いただすとショウゴの話をしてくれるから、皆興味湧いちゃってね」 「そうそう、連れて来てって頼んでも流すし」  若い店員が笑う。  そんな話を聞いたらますます、俺がここに来たのはまずかったんじゃないかと焦る。サワケースケ、知ってたなら先に言えよ。  隣のサワケースケを軽く睨むと、まあまあと肩を叩かれた。

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