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きみは誰のもの 68
「ハルは過保護過ぎるんだよ。ショウゴが誰かに取られやしないかって、そんな心配ばかりしているような奴だから」
サワケースケの言葉に、意外だよねぇと皆が頷き笑う中、俺は恥ずかしすぎてグラスを煽るしかなかった。あいつは俺の居ない所で何を話してるんだ。
「ハルは私のお気に入りだから、来てくれないと淋しくてね、今度是非二人で遊びに来て?」
空のグラスを下げながらマスターが笑顔で言うのに対して、俺は何も言えず、 黙ったまま。
ふと視線を感じ隣を見ると、俺より少し年下だろうか、パーマのかかったふわふわの茶色い髪に、大きな目をした可愛い顔。若い男が俺をじっと見つめ、ふぅんと呟いた。
「ハルさんが可愛い可愛いってそれしか言わないから、どんなに可愛い人なんだろうと思ってたら、イメージが大分違くてビックリ」
んなもん知るかと突っ込むより先に、男は再び口を開いた。
「なんでケイさんよりも、あんたなんだろ?」
大きな目でじっと見つめられ、言い返すタイミングを失った俺の援護をするように、マスターがグラスを持って戻ってきた。
「夏音《かのん》、つっかかるんじゃないの。ゴメンね、この子ハルと圭介の大ファンなんだ」
はぁと言うしかない。
二杯目のジン・ロックを口に含んだ時、夏音と呼ばれた男がサラリと言った。
「ハルとケイさんは高校生の頃から付き合ってたのに、この人に横取りされちゃったんでしょ。なんかズルい、納得いかない」
くらり。
急にアルコールが回ってきたかのように、頭の中がぐらりと揺れた。
「夏音、変な事をショウゴに吹き込むんじゃないよ? ハルと俺は付き合った事なんて一度もない。どこでそんな話になったんだ」
サワケースケが笑いながら俺の肩を引き寄せた。ウザいとふりほどきたくても、頭がまわってうまく考えられない。
「えー、だって。ハルさんに男の身体を教えたのはケイさんだって言ってたじゃない」
あまりにも軽く言うもんだから、俺もすんなり、へぇそうなのかと聞き流しかけた。
少し考えて、ああそうかと、妙に納得する。
そうか。
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