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きみは誰のもの 75

◇◇◇  母親と別れ、帰宅した頃には二十二時をまわっていた。  明日も休日だしゆっくりしようと湯船に浸かれば途端に眠気に襲われ、早々にベッドへと潜り込んだ。  広いベッドに一人きり。両手足を大の字に広げ、目一杯満喫してみる。 「はあ……今日は疲れたな」  深い深呼吸の後ぽつりと呟き、真っ白な天井を見上げ、それから瞼を閉じた。  ハルはまだ仕事かな。  珍しく電話もこない。夕方の五時頃に遅い昼飯だと短いラインがきたきりだ。  よほど時間に追われているに違いない。 「北海道か……」  最近出張やら何やらと飛び回っているし、任される仕事が増えてきたんだろう。もう少し落ち着いたら、またどこかへ旅に行くか。今度は西もいいな……。  そんな事をうとりうとりと考えながら、いつしか深い眠りに落ちていく。  夢を見た。  目の前に広がるのは、雲ひとつない、澄みきった青。  草むらに寝転んでぼんやりと空を見上げていると、突然視界に影がさした。  瞬きをひとつして再び瞼を開けると、俺を見下ろすハルの顔。相変わらずいい顔してんなと思いながら両手をその首すじへと伸ばすと、ハルは嬉しそうに微笑んで、それからゆっくりと唇を重ねた。  ハルの体温を身体で感じながら目を閉じればぎゅうと抱きしめられ、俺もハルの背中を両腕でしっかりと抱きしめる。 『省吾、好きだよ』  俺も、といいかけたところで段々と息が苦しくなってきた。  ハルの腕の力がどんどん強くなっていく。  い、痛い。  苦し……。

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