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きみは誰のもの 78

「はは、なんか色々、笑えてきてさ」 「うん? さっきの思い出してまたしたくなった? 究極のスローセックス……あ、イキ狂う省吾を思い出したらまたしたくなってきた」 「うるせぇ、あんなねちっこいの何度もやられてたまるか。当分やんねぇよ」 「当分て事は、たまにならいいんだ?」 「あー、たまにならな……」  面倒になって適当に答えると、むくりと身体を起こしたハルが俺の脇に両手をかけ、持ち上げられた俺はハルの膝にすとんと乗せられ、コンマ五秒で頭から湯気が沸いた。百七十を超える男を膝に乗せて何が楽しいんだ、ていうか重いだろ。  恥ずかしいから離せと暴れてもハルが手離すはずもなく、やがて諦め大人しくなった俺を抱き寄せ、触れるだけのキスを繰り返す。  くすぐったさに目を閉じれば瞼の上からキスをされるし、もう何をしたって逃げられないと腹をくくれば、されるがままになるしかない。  間近で俺の顔を五秒間程じいと見つめた後、くしゃりと目を細めて微笑んだと思えば、次の瞬間にはぎゅううと強く抱きしめられていた。  まあ大体想定内ではあるけれど、やっぱり戻ってくるなりやりたい放題だなこいつはと、ため息とともに頬が緩む。  そんな俺の心を知ってか知らずか、俺の耳元に唇を押し当て、嬉しそうに囁くハル。 「やっと帰ってきた気がする……省吾と暮らす、幸せな日常に」  照れる事なく思うままに口に出来るハルを、素直にスゴイと思う。 「そうか、そりゃよかった」 「ここでずっとこうして、省吾と一緒に暮らせたらいいな……」  ぽつりと何気なく呟かれたその言葉は、見えない未来への願いに聞こえた。  この部屋で暮らす二人の時間は、限られている。  一年先か、五年先か、十年先か。わからないけど。 「ここにずっといる気はねぇよ」  自分を見つめるハルの瞳が揺れた事に気付き、慌てて言葉を付け足した。 「そのうち、お前と俺とふたりでずっと、じーさんになっても一緒に暮らす家を探すんだから」  俺の言葉が可笑しかったのか、ハルはふふふと声に出して笑ってから、俺の額に額を重ね、小さな声で、そうだねと囁いた。

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