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きみといつまでも 2
「しぬー……」
目を閉じて呻いてみれば、相変わらず穏やかな調子のハルの声が降って来た。
「電気屋さん何時にくるかわからないし、俺が一日家に居るから、省吾は外へ涼みに行っておいで? 図書館とか駅ビルとか……パチンコ屋は駄目だよ」
「うるせー、いかねーよ」
「家で暑い暑い喚かれてる方が迷惑だし、遠慮せずにいっといでよ」
「うるせー、わかったよ! 黙ってればいいんだろ!」
「いや黙るっていうか、だから外へ……」
呆れ声のハルに背を向けるように、ごろりと寝返りを打ち、それからうつ伏せになってみた。
「お前だけくそ暑い部屋に置いて、涼みになんていけるか」
ああでも暑い死ぬ……と心の中で呟いた時、突然頬に冷たいものが押し当てられた。目をあければ、俺が大好きなミカンのアイスバー。と、俺を見下ろすハルの顔。むくりと起き上がり、アイスを受け取る。
それにしても、この暑さの中で何なんだその余裕な笑顔は。
「お前の分は?」
「一個しかないから、一口頂戴」
袋から取り出し先にかじれと差し出すと、アイスの角をかじったハルは、冷たくて美味しいと微笑んだ。
あっという間にアイスを平らげた後、段々と頭が冷えてきた俺は、ソファに座り新聞を読んでいるハルを見上げ、聞こえるか聞こえないかの小さな声で、悪かったと呟いてみた。
「ん? 食べ終わって落ち着いた?」
新聞から目を離したハルは俺を見下ろしてクスリと笑う。
くそ、何だその勝ち誇ったような表情は。
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