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25時のメリー・クリスマス 2
「あー、適当に切り上げて帰る……」
『適当じゃ駄目だ、直ぐにだ、今直ぐに』
「は? 何勝手な事言ってんだよ。大体今日の約束をキャンセルしたのはお前だし、それで俺が予定いれたって文句言われる筋合いねぇだろ。俺の都合も考えろ、今はサシで飲んでるし急には」
『サシ!? 二人で何をしてるんだ』
飲んでるっつってんだろと言い返せばよかったものを、先ほどの愛の告白を思い出して思わず言葉に詰まった俺の反応をハルが見逃すはずもなく。
『怪しい、何だ今の間は』
「な、何もない! わかった、早目に切り上げるから」
ギャンギャンわめくハルを無視して電話を切った後、席に戻るとこっちはこっちでうつむいたまま微動だにしない後輩岡田。
何だ何だ、この面倒な空気は。勘弁してくれ。
「えーと、岡田」
「……彼女居ないって、言ってましたよね、この間」
「いや、ええと、言ったかもしれないけど」
カラカラに乾いた喉にビールを流し込み、ハアと大きく息を吐く。
「そういう問題じゃなくてだな、お前は職場の後輩で、それ以上でもそれ以下でもないから」
「お試しでもいいんです、俺と付き合ってください」
「無理だって……」
押し黙った岡田の前で俺も押し黙り、沈黙に耐え切れず何度もジョッキを煽り、気づけば岡田のジョッキも俺のジョッキも空になっていた。
店員に声をかけようと首を回した瞬間。
「……!?」
突然強い眩暈に襲われ、思わず両手で顔を押さえる。
「香取さん? 大丈夫ですか」
「……なんでもない、ちょっと眩暈が」
正直ちょっとどころじゃなかった。目の前が砂嵐みたいに何も見えなくなって、激しい眩暈と耳鳴りに、俺はとうとうテーブルに突っ伏した。
気持ち悪い。頭が痛い。急にアルコールが回ってきたんだろうか。
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