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25時のメリー・クリスマス 3
「大丈夫ですか、店を出ましょう」
岡田の声とともにふいに肩を持ち上げられ、身体が軽くなった。
体を支えて貰いながらなんとか店を出て外の冷たい空気に触れた時、上着のポケットの中でスマートフォンが鳴り出した。
「香取さん、電話」
「……いい」
「でもずっと鳴ってますし、急用じゃないですか? 失礼します」
岡田の手がポケットに入り、スマートフォンを抜き取った。
「『ハル』って、お友達ですか」
「……同居人……いいから返せ……」
ヨタヨタと奪い返そうとした次の瞬間、俺は凍りついた。
「もしもし、すみません。後輩の岡田といいます」
出てんじゃねーーーーよ!!!!
「飲んでいたら香取さんの具合が悪くなってしまったので、今日は僕の家に泊まってもらいます、いえ、近いんで」
勝手な事いってんじゃねえ!!
「岡田、こら、返せ」
腕を伸ばしてもあっさりとかわされ、岡田はさらに会話を続ける。
「迎え? 大丈夫です、香取さんも泊まるといってますので、お気遣いなく、失礼します」
ブチリと電話を切った後、岡田は俺のポケットにスマートフォンをしまい直し、ニコリと微笑んだ。
「同居人さん、随分心配性なかたみたいですね」
「だ、誰が泊まるなんていった、俺は帰る」
頭を抑えながら岡田から離れようとした俺を押さえつけたまま、岡田はものの数秒でタクシーを拾うと俺を後部座席へと押し込んだ。
「香取さんち、ここから遠いじゃないですか。同居人さんには了解とりましたし、遠慮なさらず」
どこが了解だ。俺は確実に殺される。
「ふざけんな、帰る」
「お客さん、着きましたよ」
面倒くさそうな運転手の言葉にぎょっとして窓の外へと目を向ければ、見たことのないマンションの前。
「俺このあいだ寮でたんですよ。新築マンションだし部屋も広くて快適なんです」
岡田の家は本当に近かった。
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