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25時のメリー・クリスマス 8

 車での移動中。 「まったく、呆れてものがいえないよ」 「……悪かった」 「約束をキャンセルした俺への裏切りか」 「……わけねぇだろ」 「じゃあただの馬鹿だな」 「……」  むかつくけど何も言い返せない。 「省吾は隙がありすぎると、何度言ったらわかるんだ」 「何だよそれ、しょうがねぇだろ、まさか後輩があんな」 「そんな事だから、一服盛られたりするんだ」  ぎょっとして顔を上げた瞬間、ひどい耳鳴りに頭を抱え目を閉じると、隣から特大のため息が聞こえてきた。 「大方、質の悪い薬を飲まされたんだろう、それは副作用の症状だ」  呆れ声に耳を傾けながら、そいうやこいつ製薬会社の研究員だったなと思い出す。 「省吾の後輩じゃなかったら喉元潰していた」  冗談に聞こえないし、後輩で良かった本当に。 「……悪かった……」  ぼそりと呟くと、返ってきたのは冷ややかな言葉。 「そんな言葉で俺の気が治まると思っているの? 帰ったらお仕置きだよ」  すげぇ、こわい。 「……俺、今、すげぇ具合悪い……」 「今日は泣いても許さないよ」  釘を刺された。  このまま永遠に家に着かなければいいと願ったのも束の間。  愛すべきマンションに到着し、ハルの肩に担がれながら、そうだこのまま寝たふりをしてみたらどうだろうなどと必死で逃げ道を探していた俺だったが、玄関の扉が閉まった直後振り返ったハルの形相を目にしてそれは甘い考えだったと気付かされた。  ころされる。

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