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25時のメリー・クリスマス 10

 今から自分の身に降りかかるであろう恐怖に思わずぎゅっと目をつぶる。情けないけれど恐いんだからしょうがない。以前も何度かこんな事があった。けれどそれは寝室だったし、こんな場所で何かするなんて悪趣味にも程がある。  みぞおちからヘソへ向かって滑るように降りていったハルの両手は、そこから更に鼠蹊部へと移動し、内腿へとなぞられた。  心臓が跳ね、全身が脈打つ。滑らかに動くハルの指先はまるで優しくて、それに気付いた時俺は目を開け、窓ガラスに映るハルの顔を見つめた。  その表情は相変わらず氷のように冷たくて、それでも俺をじっと見つめている。  思わず名前を呼びかけた時、突然両脇の下を掴まれ、力いっぱい揉み上げられた。 「いっ痛っ!! ちょ、な」  ハルの両手はそこで止まらず、更に脇腹を満遍なくくすぐり始めた。 「ひゃっ! ばかやめ……くすぐったいって!!」  くすぐられる事が大の苦手だと知っていてのお仕置きかと力いっぱい振り返れば、それに合わせた様にハルの唇が重なった。  背後から抱きしめられたまま、何度もキスを繰り返す。  どちらからともなく唇を離し、大きく肩で息を吐くと、今度は頭部を力いっぱいマッサージされた。  ……マッサージ? 「少しは頭痛も治まった?」  ハルの言葉に、そういえばと今更気付く。 「……かも」 「頭痛にはリンパの流れを良くするのが効果的だ」  はあ。  いや、じゃなくて。  言うにも気が引けてじっとしていると、背後から大きなため息がひとつ。 「具合悪い上に小鹿みたいにカタカタ震えてるから、今日のお仕置きはこれで終わり」 「な、誰が小鹿だっ!」  勢いで身体ごと振り返ると、正面からぎゅうと抱きしめられた。 「身体が冷えてる。風呂に入ろう」  色々大分納得はいかないけれど、ここは堪えて従う事にした。  さわらぬハルに祟りなし。  あの能面のような表情はもう暫く見たくないと、密かに小さくため息をついた。

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