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25時のメリー・クリスマス 11

 とはいえバスルームで襲われる事は想定内で、ハルの熱を俺は疲れ切った身体で受け止め続けた。 「ふっ、う、うっぁっ」  声が響かないように、壁につけた手の甲に口を当てても、腰を揺さぶられる度に漏れてしまう。  ハルの肉棒に内側から下腹側を擦られ、緩く浅く抜き差しされる度に下半身がビクビクと震えて止まらない。鈍い快感に耐えきれず、背後のハルへ視線をむければ、口を開くよりも先に唇に吸いつかれた。 「んっ……ハル、も、激しくしろっ……」 「悪い事した省吾が俺に命令するの? 駄目でしょ」  意地悪く微笑むハルに悪魔を見ながら、じんわりと涙が滲む。 「そんな可愛い顔しても駄目。俺は怒ってるんだからね」  可愛いとかいうんじゃねぇと突っ込みたくても再び舌を絡め取られ、喘ぐことしか出来ない。だらしなく唾液を垂らしながら、ハルの舌に応えるように舌を伸ばして貪り合う。もっと、もっと奥まで突いてほしい。早くイきたい。そして湯船に浸かりたい。頭痛は止まないし、何をされても身体中じんじんして疼きの波が止まらない。 (つらい……苦しい……最悪だっ……)  尻を突き出して揺らすうちに、やっとハルの両手が俺の腰を力強く掴んだ。 「省吾、こんなの……俺以外の誰かにしたら、絶対に許さないからね?」  耳元で囁かれて全身が粟立つ。この声も好きだと言葉にしたくなる。  艶やかな低音が耳の中で溶けた直後、容赦なく腰を打ち付けられた。 「ふぁっ!」 「省吾、俺の、俺のだ」 「あっあっあっぁ……あぁっ……」 「好きだ、好き、全部……愛してる、省吾」  尻孔から熱い異物が引き抜かれると身体を返され、正面から抱きしめられた。右足を持ち上げられて、開いた孔に再び杭を打ち込まれ、ひっと声が漏れる。ハルの背中に両腕をまわしてしがみつき、苦しい体勢に耐える準備をしないととても立ってはいられない。  身体がドロドロに溶けて、このまま熱いシャワーの湯とともに排水口へ流れて消えてなくなってしまうんじゃないかと頭の隅で考えながら、まるで俺にすがりつくように熱を打ち付けるハルを両腕で抱きしめた。  荒い息を吐きながら、ハルは何度も繰り返す。 『名前を呼んで』 『好きだと言って』  眉間にシワを寄せ、苦しそうに何度もねだる。  こんなに一緒にいるのに。こんなに身体を寄せ合っても、それでもまだ、お前から不安が消えないのは何故だろう。  俺に足りないものはなんだろう。  お前を幸せにするために、俺は何が出来るだろう。  俺は何度も名前を呼んだ。ハルが求めるままに、何度もハルの名前を呼んだ。ハルの髪を梳くように撫でながら抱きしめれば、大きな男の微かな震えが伝わってくる。 「俺が一緒にいたいのは、お前だけだ……」  力の出ない身体を預けながら呟くと、ハルは小さくうんと頷いた。

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