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25時のメリー・クリスマス おまけ2
「あの人が来てくれて良かったと、思います。でなきゃ俺、あのまま香取さんに無理矢理酷い事してしまっていたと思います……」
はあとため息をつく岡田。それは本当に心から良かったと思うよ。
「あー、まあ……そうだな、あいつは……」
モゴモゴとうまく言葉に出来ずにいる俺を見て、岡田は頬をゆるめて表情を崩した。
「大丈夫です、香取さんが秘密にしているなら俺、誰にも言いません……でも」
最後のいい回しにギクリとして顔をあげると、岡田はニコリと微笑んだ。
「正直、悔しくて泣きそうになりました」
「え?」
「あの人の前で香取さんが好きだなんて恥ずかしくて言えなくなるくらい、あの人すごかったから」
「すごい? 何が」
そこへ頼んでいた定食が届き、会話は中断されてしまった。
タイミングを逃した俺はそのまま黙って食事を始め、岡田もまた、何も言わずに食事を始めた。
食事を終えたあと、煙草を吸っても良いかという岡田に、勝手に吸えよと脇に寄せられていた灰皿を手渡し、俺が煙草を吸わないから気を使っていたんだなとそこで気付く鈍い俺。
岡田が煙草を吸い始め、その姿をなんとなく眺めながらふと過去を思い出す。
俺は煙草は吸わない。名古屋で働き出した頃に吸う癖がついて、こっちにきてからも暫く吸っていたけれど、ハルと暮らし始めてやめた。
禁煙組のハルに無理矢理やめさせられたのだけれど、やめられた今となっては感謝している。
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