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25時のメリー・クリスマス おまけ3

 立ち昇る煙をなんとなく目で追った時、岡田が口を開いた。 「あの人……」 「ん?」 「ほんとすごかった。なんか俺も惚れそうになりました」 「……は?」 「いや、冗談です、ははは」  いやお前今の結構大分マジに聞こえたぞとつっこみたくなったけれども、これ以上つっこんで面倒になりたくないと言葉を飲み込んだ。  ハルの何が『すごい』のかは結局聞けずじまいに終わり。  その夜帰宅し、隣で眠るハルの横顔をながめながら、なんだか急に、泣きたくなるほど切ない気持ちになった。  何故だろう。  心に気持ちが追いつかない。  何かに、負けそうになる。  それを振り払うように、俺はハルの唇にそっと唇を押し当て、それからハルの背中に腕をまわし、ぎゅっと抱きしめた。  ずっとずっと、離れないように。そのための努力を、忘れないように。  こいつがくれる愛を、ひとつもこぼさないように。  やがて眠りにつくまで、俺はハルを抱きしめ続けた。 終

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