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夏の王様 2
L字型のソファにハルと省吾が並びで座り、青木はその脇の1人掛けソファに腰を下ろす。
グラスビールで乾杯した後、青木は二人に向かって勢いよく両手を合わせ、拝むように頭を下げた。
「お願いします!」
「断る」
「まだなんも言ってないじゃん!」
袈裟切り並みの勢いでバッサリと切り捨てたのは省吾ではなく、涼しげな笑顔を浮かべたハル。
出会った頃は青木に対しても完璧な外面スマイルで接していたハルだったけれど、今では地のS気質を惜しみなく発揮し、会う度冷たくあしらっては青木の反応を楽しんでいる。
青木に視線を戻せばへこたれる様子もなく、姿勢を正して座り直すと鞄から何やらチラシのようなものを取り出し、まずはこれを見てくれと、リビングテーブルの上にバンと広げた。
「何だこれ」
手に取った省吾の横からハルも覗き込み、それから青木へと視線を戻す。青木はテーブル越しに身を乗り出し、ハルと省吾の顔を交互に覗き込んだ。
「もうすぐ夏! 夏といったら青い空、青い海、乾いた砂浜! ビーチバレー大会開催ですよ!」
どうだと言わんばかりの顔が近づいてきたので無言で押し返せば、ハルまで便乗さながら「省吾に近づくな」と青木の身体を遠くへ押しやる。省吾からしてみればどちらも同じ位に鬱陶しい。
「地元川崎での大会だよ、香取も地元だよね。ビーチバレーの経験はない?そう、大丈夫大丈夫、初心者に優しい大会だから! ルールは二人制と男女ミックスの四人制。お二人で是非!」
確かに川崎は省吾の地元でもある。ふと、正月以来会っていない地元の連中の顔と、晃の見舞いに行った日の事を思い出した。
(そういや完治とは五月の連休中に偶然会ったな)
基本的に祭り好きの連中だから、誰かしら参加しているかもしれないなと想像し、ほんの少し口角を緩めた。
「どう? 勿論賞金と副賞もありますよ!」
大会のチラシをぼんやりと眺めていたら青木に食いつかれ、いかねーよと口を開いた所で、隣に座っているハルが「ちょっと見せて」と省吾の手からチラシを引き抜いた。
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