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夏の王様 13

「あれ、青木くんは?」  青木が消えた事に気付いた万優がくるりと辺りを見回したところで、省吾は人探しの手伝いにでかけたと伝えた。 「人探し? 何かあったの」 「さあ。兎が飼い主とはぐれた感じだったな」 「兎?」  万優は軽く首を傾げた後、ものの数秒でまあいいかと切り替えて、綾香達と談笑しながら歩き始めた。  選手控えスペースに到着すると既に結構な賑わいになっていた。部屋をぐるりと見回し、座れるスペースを目で探す。 「あ、ここいける。灯台下暗し〜」  万優が素早く六席仕様の空きテーブルを無事確保し、こっちこっちと手招きをしている。手際の良さはこういうところにも出てくるものだなと感心しながら席につき、先程受け取ったプログラムに目を通した。  参加者はAとBのブロックに分かれ、午前中に予選リーグ、トーナメント戦を行い、昼休憩を挟んで午後に各ブロックのトーナメント決勝戦、代表チームでの決勝戦、三位決定戦を消化し、十六時前には閉会式の予定となっている。 (まあまあタイトなスケジュールじゃねぇか、疲れそうだな……明日一日寝てられっかな) 「飲み物買って来るよ。希望はある?」  ハルの声が耳に入り顔を上げると、皆に飲み物の希望を聞いているようだ。目が合うと「省吾はジャスミン茶かコーラだよね」と先に言われた。希望通りなので頷いたところで、隣に座っていた綾香が立ち上がり、一緒に行くよとハルに声をかけた。  二人が並んで歩き出す様子を何気無く眺めていると不意に隣から殺気を感じ、視線を向ければ伊勢さんも二人の後ろ姿を眺めていた。先程も見た気がする、この顔。表情筋がピクリとも動かない。 (機嫌悪いやつだこれ……)  ハルと綾香が仲良さげに連れ立ってフードーコートの混雑の中へと消えた後、テーブルに残ったのは自分を含めて三人。  共通の話題も思いつかず、会場内の騒めきに耳を傾けていると、万優さんが思い出したように口を開いた。 「ハルくんとアヤカちゃん、中学の頃は一緒に生徒会もやってたんだってね、ハルくんは生徒会長だって、想像できるよね~」 (あいつ生徒会長なんてやってたのか、まあ想像出来なくもないけど)

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