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夏の王様 14

 黙って聞いていると万優と目が合い、そこで自分に話しかけているのだと気付く。「へぇ」と適当に相槌を打てば、きょとんとした表情で見つめられた。 「へぇって、初耳なの?」 「はぁ。地元仲間って位しか聞いてないし」  自分の言葉に万優は驚いたような表情を浮かべている。そんな顔をされる意味が分からなくて、省吾は軽く首を傾げた。何かおかしな事を言っただろうか。  今の歳でも続いている地元の仲間ならそれなりに長い付き合いなんだろうし、ハルからそれ以上の説明がなければそれ以上突っ込んで聞く必要はない。ハルと自分はそんな事が多いと思う。そこまで考えて、ふと思い当たった。  いや、ハルは違う。気になれば何でもこっちが口を開くまでしつこく聞いてくる。 (そうか、俺だけか)  黙ったままの省吾に万優が何か話しかけようとした時、テーブルに置かれていた万優のスマートフォンに着信が入った。振動音が静かに響き、三人同時にスマホへ視線を落とす。  万優はスマホを手に取り、ちょっと電話してくるねと一言添えてから席をたった。  気付けば伊勢と二人きりになってしまった。とはいえ伊勢も自分も無駄口をたたく方ではないから、自然と沈黙が続く。  そういえば青木帰って来ねぇなと考えながら室内へ視線を流し、それから隣の伊勢へと流し見て、自分が直視されていることに気付いた。 (おわっ)  思わず声が出かかったけれど、肩を揺らすまでになんとか留めた。 (な、なんだ? 俺、伊勢さんにも何かしたか?)  伊勢は頬杖をついた格好で、涼しい表情のままじっとこちらを見つめている。とはいえ伊勢が何か言葉を発するわけでもなく、省吾から話を振った方が良いのか頭を巡らせていると、ふいに伊勢が口を開いた。 「あの指輪、お揃いなのか」  指輪と言う言葉にハテと首を傾げる。あの指輪ってなんだ。  その二秒後、ハルにプレゼントした指輪の事だと気付き、途端に顔が熱くなった。 「、、、えっ」  お揃いって、何だ?何がどこでバレたんだ?そもそも伊勢さんと買いに行ったのは一月終わりの頃で、あれからもう半年は経っているのに、今更何で話題に上るんだ。

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