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2 酔った勢い
「こいついつもこうなんすよ、酒弱いのに調子乗りすぎ……」
智を呼びにきたこの男は、智が酔い潰れるのはいつものことで「困った奴ですよね〜」と楽しげに話す。蓮二はそれを聞きながら内心「とんでもないことだ!」と、憤慨し苛ついた。
こんな可愛い顔をして酩酊していたのでは何処ぞの馬の骨にお持ち帰りされてしまうじゃないか! と、自分の思考を棚に上げ、蓮二はそのまま智を抱き上げる。
「智は俺が連れて帰るから、後はよろしく頼むよ」
「え? そう? お兄さん悪いね。ありがと〜」
なんの疑いもなく男は智を蓮二に託すと、もといた席に戻っていった。
恐らくお互い男だということもあり、仮に知らない奴でもまあ危なくはないだろう、といういい加減な考えでの行動だろう。蓮二にとって結果良しとはいえ、毎回こんななのかと心配になった。
「おい、自分で少しは歩けるか?」
「うん? あ……大丈夫」
智は大丈夫と言いながら、まるっきり体を蓮二に預けたままヨロヨロしている。半分寝てるんじゃないかと思うくらい目も開いていない。それでもそんな智が可愛く見えてしまうのだから重症だった。
「全然ダメじゃんか……全く、ほら行くぞ。しっかりしろ」
「ふぁい……」
「う、重っ!」
蓮二だってそう力も強いわけじゃない。自分より少し背が低くても、幾分がっしりとした体つきのせいか重たく感じた。智を抱えるようにしてフラフラと店を出る。辛うじて少しは自力で歩いてくれているからなんとかタクシーを捕まえるまで持ちこたえることができた。
「ほら、着いたぞ」
「へぃ……」
勢いでそのまま智を自分の部屋に連れ込んでしまった。智も智で、酔いのせいか自分の状況がまるでわかっていないようだった。
「靴、自分で脱げるか?」
「うん? あ……ただいまぁ」
「………… 」
全く話にならないと、蓮二は智の靴を脱がし、また体を抱え上げ部屋に入れた。そのままベッドに放り投げるようにしておろすと、智はヘラっと笑ってやっと蓮二の方へ顔を向けた。
「あれ? ここどこ?」
ごろんと横になったまま目を泳がせ蓮二に聞く。「俺の部屋じゃねえし、お兄さん誰?」と、ニタニタしながら蓮二を見つめ、息苦しいのかシャツのボタンを外し始めた。
「俺の部屋……酷く酔っ払ってたから連れてきた」
「そか。なんかごめんね。でも俺眠くてもうダメ……」
中途半端に服を脱ぎ、そのまま嘘のように眠ってしまった智を唖然として見つめる。何度も声をかけても智は目を覚まさず爆睡していた。
「マジか……危機感なんてあったもんじゃねえな」
気持ちよさそうに眠っている智の顔を眺めながら、蓮二は一人呟いた。
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