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3 欲情する

 蓮二はベッドで寝ている智を見つめながら、とりあえずシャワーでも浴びてくるかとぼんやり考える。  多少は酒が入っていたとはいえ、自分はそんなに酔っ払ってはいないはず。それなのに見ず知らずの男を部屋に連れ込んでしまったと、今更ながら動揺した。 「でも、見れば見るほどタイプなんだよな……かっこいいな」  初めての感情にドキドキする。恐る恐る眠っている智の髪を撫で、蓮二は急いでバスルームに向かった。  体にあたる少しぬる目のシャワーの湯が心地良い。介抱した際にギュッと強く触れた智の感触をふと思い出し、体が火照った。整髪料なのか香水なのか、智の匂いが自分の体からも香っているのに気がつき、途端に胸が高鳴った。 「あ……嘘だろ……?」  智に触れたのを少し思い返しただけで、腹の辺りに熱が集まるのがわかる。そろりと下腹部に手をやると、しっかりと勃起している己に溜息が出た。  うまく熱を逃せないまま、蓮二はそのままタオルで体を拭き部屋に戻る。相変わらず気持ちよさそうに眠っている智の寝顔を見ながら「いい気なもんだ」と、怒りに似た感情を頭の奥へ押しやった。  なんとなくベッドの横に腰を下ろし、また智の髪にそっと触れる。さっきまでは何の躊躇いもなくヘベレケの智を抱きかかえていたというのに、少し冷静になったのか髪に触れるだけでドキドキと興奮した。  もう少し──  もう少しだけ触れてみたい衝動に駆られる。遠慮がちに髪に触れていた手がそっと下り、柔らかい頬に触れる。思いの外汗ばんだ肌に智の体温を感じ、手のひらが吸い付くように離れない。ボタンが外れ肌けた胸元に自然と目がいき、蓮二は自身の熱い滾りを下着の上からそっと握った。 「う……ん、何?」  智の手が、頬に触れていた蓮二の手に重なった。蓮二は心臓が飛び出るほど驚き動揺したけど、智に至っては嫌がる風でもなく蓮二の手に自ら頬を寄せるような行動をした。 「ふふ……お兄さんスケベ」  智の視線が自分の股間にあるのに気がつき、慌てて空いた手でそこを隠す。 「俺見てそんなにしちゃってんの? どういう心境?」  智はヘラっと笑って蓮二の手を取り、唇をあてじっと見つめる。チュっと軽く音を立て蓮二の手のひらに何度もキスをする智に、蓮二は何も出来ずにされるがまま目を奪われた。  これはどう捉えたらいいのかわからなかった。同じ男に欲情しているのだと気持ち悪く思われてしまうか……でも目の前の智はそんな素振りは微塵も見せない。むしろ蓮二のことを誘っているようにも見えてしまった。  これは自分にとって都合よく見えてしまっているだけなのか──  でもどうせ酔っ払っているんだ。そう蓮二は少し投げやりに言葉を返した。 「どうって……見たままだよ。智を見てエッチな気分になってる」  今まで自分がゲイだということは誰にも話したことはなかった。どう反応されるのか怖かったから、ずっと隠して生きてきた。それでも初めて一目惚れしたこの男にはちゃんと自分を知ってもらいたいと思ってしまった。  拒絶されるかもわからない、正直とても怖かったけど、なぜだか智なら大丈夫だと、心のどこかで安心している自分もいた。

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