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7 目覚め
翌朝、先に目を覚ましたのは智だった──
ユサユサと乱暴に体を揺さぶられ、蓮二は不機嫌に目を覚ます。まだ眠気の取れない頭で瞼を開けると真面目な顔をした智が見下ろしていた。
「なあ! ここどこだ? 俺……俺もお兄さんもその、裸! ねぇなんで??」
狼狽えながらそう訴える智を見て、もしかして昨夜のことは覚えていないのかと蓮二は動揺した。
「あ、俺の家。その、凄く酔っ払ってたから」
「マジか〜! ねえ、俺、失礼なことしてない? 何で裸? もしかして……嘘だろ? うわぁ……やっちまった? あぁぁ」
ここまで言われたら、本当に何も覚えていないのだと蓮二は少し寂しく思った。ましてや男相手に裸で目が覚めたなんて、智は一体今どんな心境なのだろう。それを思ったら「やっちまった」のは自分の方だとすっかり気が滅入ってしまった。
「いや、何もないから……君、めちゃくちゃ酔って服脱いで速攻寝ちゃったからさ。あ、俺はこういう格好で寝るのが習慣みたいになってて……その……俺も少し酔ってたから、なんかごめん」
蓮二はそう言うのがやっとだった。
男同士で間違いなんかあってたまるか。全部酒のせいなのだから安心しろ、そう言ってやりたいのにそこまでの言葉は出てこない。一目惚れして勢いで連れ帰り、おまけにお互い同意の上だと勘違いしてセックス……ではないけどそれに準ずる性的な行為までしてしまったなんて、口が裂けても言えなかった。寝入る前に体も寝具も綺麗にしておいて本当に良かったと、蓮二は心の中で胸を撫で下ろす。
「あ! いいんです! やめて! 俺に謝らないで! 謝るのは俺の方だから、ほんっと! ごめんなさい! 初対面の人にこんな……って、ねえ! お兄さん名前は?」
勢いよくベッドから飛び降り土下座しながら捲し立て、顔をあげたかと思えば今度は目を輝かせて名前を聞いてくる智に圧倒され、「蓮二」といささか腑抜けた声で返事をした。
「蓮二……さん。蓮二さんね! 俺は智! 智って呼んでよ。ねえ、蓮二さんは今日は休み? 時間平気?」
土下座の姿勢からシュバッと勢いよく立ち上がると、今度はいそいそと脱ぎ散らかされた自分の服を拾い上げ、ドタバタと着替えながら聞いてくる。蓮二はとりあえず智の慌ただしさと勢いに圧倒されながら、聞かれたことを頭の中で反芻した。
「えっと智、ね。俺は今日は仕事。でも午後からだから、まだ時間は大丈夫」
「そうなの? てかさ、蓮二さんも早く着替えてよ。ちょっとその体、エッチで俺見てらんない。変な気分になっちゃう。へへ……」
「は?」
今度は耳まで赤くして、顔の前で手をぶんぶんと振っている。智に「さっさと着替えて」と言われ、わけがわからないまま蓮二ものそのそと着替えを済ませた。
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