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 メンバーが揃わない状態で行われる集まりはもう何度目になるだろう。  皆の中では晴輝がいないことが当然になってしまったのだろうかと恐怖してしまう。現に新曲の打ち合わせも晴輝が間に合わない前提で進められていた。  今も俺の部屋で作曲に励んでいるであろう晴輝に思いを馳せると、胸が締め付けられるような痛みを訴える。 「みんな、ちょっと残ってほしい」  会議が終わってスタッフさんが席を離れ始めた時、柚葉がメンバーだけに声をかけた。早く帰りたいとブーブー野次を飛ばしていた和人も、彼女の微笑さえ感じ取れない真剣な表情を見て大人しく席につく。  パチッ、と音を立てて柚葉の力強い眼差しが俺を捉えた。否、力強さの中に不安の色を交えているようにも見える。  ピリピリと緊張感を張り巡らせた部屋は、唾を飲み込む嚥下音がごくりと響くほどに静まり返っていた。 「火曜日の練習終わり、全員俺の部屋に来て欲しい」  早口でそう言い切った。もしかすると声が震えていたかもしれない。  その言葉を聞いた奏多と和人は予想外だと顔を顰めている。  何かあったのかと奏多に問われた俺は、返答をしようとして初めて自分の唇が震えていることに気がついた。  自らを落ち着かせるために肺に空気を取り入れるが、渇いた空気は喉を干からばすだけだ。 「晴輝に、会って欲しい」 「……はっ、何、どういうこと?」 「なんで駿佑の部屋に行ったら晴輝に会えるの?」  その名前を聞いた二人は理解できないという表情を隠そうともせず露わにする。伝えたいことは、伝えなければならないことは沢山あるのにそのどれもが言葉にはならなかった。  奏多と和人に何も告げず生活を共にしていた事実に胸が締め付けられる。  彼らも俺と同様に晴輝を心配していたはずだ。何の報告もされずに待たされた一ヶ月半、どんな想いで過ごしていたのだろうと考えるだけで罪悪感が募る。 「いつから?」 「え?」 「いつから会ってたの?」 「…………それは……」 「私は晴輝くんが見つかった四日後にはもう会ってた」  俺を庇うようにして返答した柚葉の言葉は、奏多と和人にとっは衝撃過ぎる事実だっただろう。目を剥いた彼らは口をぱくぱくと開閉させている。 「なんで何も言ってくれなかったんだよッ! 俺らがっ……晴輝のことどんだけ、どんだけ心配してたか……知ってただろ?」  机を叩きながら立ち上がった和人から鋭い睨みと怒声が飛んだ。  そう言えば以前も一度こんなことがあったっけ。その際止めてくれた奏多も今回ばかりは動く気配が無かった。あの時のように中立では無かった。  もし自分がそちら側の立場だったら、隠されていたことに憤りを感じてしまうに違いない。  俺が今晴輝と共に居られるのは、あの日柚葉の電話を聞いてしまったから。ただ、それだけの理由だった。  奏多と和人の想い、そしてグループのことを考えるともっと早く合わせるべきだったのかもしれない。それでも晴輝を想うとこのタイミングが最善だったんだと、自分に言い聞かせることしか出来なかった。

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