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番外編『皐月、セックスレスで悩む』1
晴れて退院してから半年経った。
飲酒もカフェインも控えて、極めて健康な日常を送っている。
「ユーリ、退院してからボブと、その、どのぐらいでセックスした?」
オレンジジュースを飲みながらはっきりと言う自分とは対照的に、真っ赤になり驚くユーリを眺めた。
「…さ、皐月!?」
ユーリは大きなブルーの瞳をさらに大きくさせ、口をぽかんと半開きに開けている。
「ご、ごめん。ちょっと気になってさ。ほら、お互い術後は激しい運動とか出来ないからさ……。」
誤魔化すように言うが、内心はハラハラとボブとユーリのそっちの進捗が気になっていた。
「……えっと、退院後だから………その、2ヶ月ぐらい後かな………。」
ユーリは恥ずかしそうに俯いてアイスティーを飲んだ。ちゃんと答えてくれる所が可愛い。ボブがベタ惚れなのもわかる気がした。
「2ヶ月…………。」
妥当な数字だ。
重い心臓病から回復したユーリでも2ヶ月。ボブとの交際は順調で、仲睦まじく過ごしてるのがよく分かる。
「あ、ほら!……皐月は仲良くやってるんだよね?」
ユーリとはすっかり仲良くなり、ボブよりもしょっちゅう会っている。絵本作家であるユーリと本屋に行き、悠のプレゼントに絵本をセレクションして貰ったりしたりと親交を深めていた。
「………うん、仲は良いよ。」
退院後、蒼とは順調に仲を深め、ついに結婚までした。黒瀬が『離婚したらカウンセラー紹介するからね。』と嬉しそうに言ってるのを蒼が横で睨んでいたのが面白かった。
「なら、大丈夫じゃない?」
「いや、セックスレスなんだ。」
間髪入れず答えるのでユーリがアイスティーを咽せそうになり、慌てて水を差し出した。
そう、実は初めてのセックスレスに陥っている。触れ合いはあるが、セックスに持ち込もうとすると、するっと蒼は避けてしまうのだ。一度、したいと願い出て言うと、蒼は申し訳なくこう言った。
『僕が君に無理させたから、心配なんだ。……それに歯止めが効かなくなる。だから、もうちょっと待ってくれる?まだ皐月の身体に負担をかけたくないんだ。」
主治医に言われると何も言い返せず、悶々とした日々を過ごす毎日である。
確かに蒼のセックスは激しい。
回数も多く、いつも意識を手放しては抱き潰されていた。だが、もう半年も経過している。そろそろ営みを開始させたい。いや、そろそろ限界だ。
「蒼が?」
ユーリは驚いた顔で自分を凝視する。
「やっぱり、そうだよね………。」
「あ、いや、ごめん。蒼とはした事が無いんだ。発作が心配で、キス止まりでさ……。ごめん……こんな話。聞きたくなかったよね。」
「え、あっ!そうなんだ……。ごめん。あ、そっか。」
てっきりユーリにも、蒼のセックスが激しいとぼやくところだったので危なかった。
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