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番外編『悠君、お泊まりに来る』5

「あれ?皐月寝ないの?」 書斎に入ろうとすると、蒼が背後から呼び止めた。 書斎はリビングの向いにあり、隣に物置が挟んであり、一番奥の寝室からは遠い。 食器を片付けて、のんびり二人でソファでテレビを見終わり、そろそろ寝ようかと腰を上げて、自分は書斎に入ろうとしていた。 蒼の声にびくっと身体が揺れて、ゆっくりと振り返る。 「………ちょっと仕事をしたくてさ…。少しやったら寝るよ……。」 上手く嘘がつけない自分はしどろもどろに答える。 「大丈夫?早く寝た方がいいんじゃない?」 蒼はさっきから心配そうな顔をして気遣ってくれている。 そういう本人ですら、明日朝早くから出勤なのに自由業の自分を一番に心配してくれる事に優しさを感じてしまう。いつだって蒼は優しく、自分を優先して考えるのでたまに心配になる。 「う、うん。早く寝るよ。蒼はゆっくりしてて。」 「本当に無理しないでね。…………あれ?皐月、僕の上着なんて持っていくの?」 蒼は目ざとく、片手に手にしていた蒼の先ほど来ていた上着を見つける。 自分の片手には蒼が先ほどまで来ていたジャケットを持っている。 「あ、あとで消臭して掛けとこうと思ってさ………。」 笑顔で蒼にそう言い、ドキドキと心臓の鼓動を抑えながらそっと書斎に入る。 蒼は不思議そうな顔をしたが、向こうから寝室のドアを閉める音が微かに聞こえた。 書斎は薄暗く、机の関節照明をつける。 オレンジ色の光が薄暗さを仄暗く照らす 横に置いてあるトランクを開けて、あの箱を出す。 今日の昼に仕舞って置いたのに、また出す事になるなんて、自分の自制のなさに呆れてしまう。 それでも早くこの疼いた熱を冷まし、仕事を少し進めてから寝ようと思った。 呆れながら、そっと細長い木の枝のようなバイブを取り出して眺めた。いつみても卑猥な形だと思ってしまうが、それを見ると身体がまた熱く火照りそうだ。 「ねぇ、皐月、それでなにをするの?」 背後から低く甘い声がして、びくっと身体を揺らして振り返る。 そこには腕組みをして、じっと自分を見下ろす蒼が立っていた。

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