17 / 36

2人で眠る薄い布団

 結局あれからもう一戦してしまい、玲望はそのあとくったりしてしまった。  よって瑞樹が後片付けをして、布団を敷いて、玲望を布団に押し込んだ。  玲望の布団は薄っぺらくて、シングルサイズなので男二人には随分狭い。だけどそのぶん密着できるので、瑞樹は嫌いではなかった。  布団からはみでないように玲望をしっかり腕の中に抱くことができる。普段素直でない玲望も「布団からはみでるから」と言えば、最初こそぶつぶつ言うことがあっても、最終的に大人しく収まってくれるから。 「明日はバイトあんの?」  さすがに疲れた様子の玲望の髪を撫でつつ、瑞樹は尋ねた。玲望はやはり消耗した、という様子と声で「んー」と生返事をする。 「昼過ぎ、から……」  せっかく一日自由になる日なのだ。バイトが入っていないほうが稀であった。  でもそれが昼過ぎならば、午前中は一緒にいられることになる。瑞樹はむしろ嬉しくなった。 「そっか。じゃ、玲望の朝飯が食いたいな」  ちょっと甘えるようなことを言ってしまったのも、そんな気持ちから。  きみの味噌汁が飲みたい、ではないが、恋人の朝ご飯を食べられるなんて、幸せなことではないか。玲望は想像したように「たまにはお前がやってもいいんだが」とぶつぶつ言ったけれど、一応呑んでくれたらしい。  疲れていたのもあっただろう。まだ普段の寝る時間からすると早いほうだっただろうに、うとうとしはじめたのが感じられた。眠りに誘うように、髪に触れる。優しく梳いた。 「オヤスミ」  瑞樹の言ったことにはやはり「んー……」しか返ってこなかった。おやすみを言う前に玲望は眠りに落ちてしまったようだから。  すやすや寝息を立てはじめた玲望を腕に抱きつつ、瑞樹は自分の目がとても優しくなっていることを自覚する。  今日もとても幸せな日だった。こういう幸せな日をくれる玲望のことを愛しく思う。そういう存在でいてくれることに、いくら感謝しても足りない。  ただ……やはり、行為のときに毎回声を殺すのが必要になってしまうのはちょっと可哀想で、そして瑞樹自身もちょっと不満で。  いつか。いつか、もう少し先のこと……。  自分と玲望が高校を卒業したとか。そのくらい先の未来。  そのときには玲望に、もっと壁の厚い、しっかりした家をあげたいなと思うのだった。行為があれそれのほかにも、安心して暮らせるように。不便などさせないように。  それは大学生の身でも高望み過ぎるかもしれないけれど、叶えられないなんて思わない。高校卒業後では無理だとしても、社会人になったらとか、いくらでも時間はある。  それまでの間、玲望と一緒に過ごしたいと思っていたし、玲望のほうもいくらかはそう思ってくれているのではないかと感じていた。  明日の朝ご飯はきっと、その日を迎えるための一歩になってくれる。  そんなふうに感じながら、瑞樹は玲望を抱えて金髪に顔を埋めて、目を閉じた。

ともだちにシェアしよう!