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第2話
「見ろナイト! 苺の初売りだって!」
活気溢れる街の喧騒に負けないように声を張る。
数あるレフィシーナ名物の果実の中でも、特に苺の甘味は絶品だ。これは何としても手に入れて帰りたい。
「美味そう〜! おっ、甘夏もある! そうだ、これで何かスイーツを作ってもら……て、おーい、聞いてる?」
「なんか声が……。あと少し嫌な予感」
ナイトは鼻を擦ると、警戒するように辺りを見回した。
その疑心が的中したようで、路地裏からか弱い叫び声が聞こえてくる。すかさず声のする方へ向かったナイトを追いかけ、おれも慌てて走った。
街の喧騒がすぐ傍にあるというのに、その細道に居たのはたった二人だけ。12歳くらいと思われる少女が、下衆な目をして荒く呼吸する男に迫られていた。
「や、やめてくださいっ……」
「へへ、いいじゃねぇか……。その様子じゃ発情初めてなんだろ? おれが相手してや――ゔッ!」
「――ナイト!」
男の肩に、蹴り上げられたナイトの右足が命中する。かなり手加減したように見えたけど、男は呆気なく地面に倒れ込んでしまった。
「いい大人が下らない真似するな、情けない」
「いでで……ッ!」
ナイトが男の手首を思い切り掴むと、痛みに顔を歪めた後、降参したのか尻尾を巻いて逃げていく。
本当に、なんと情けなくどうしようもない男なんだ……。
「おーい君、大丈夫か?」
「あ……ありがとうござ――っえ、ルーゴ様……?!」
少女は恐怖からかそれとも何か別の原因があるのか、酷く体を震わせていた。驚いた顔にはまだ幼さが残っている。
「怪我はない?」
「ない、ですけど……」
「よし、おれが送って行こう。家まで案内してくれ」
顔を赤らめたまま萎縮する少女にできる限り優しい声音で笑いかけると、彼女は慌てて首を横に振った。
「いいえっ、王子にそんなこと……っ」
「いいからいいから。ナイトは先に戻っててくれ。この子を送っていく」
「お前を一人にさせられるかよ。おれもついて行く」
「え、でも……」
「いま抑制剤を打ったから大丈夫だ。オメガ用のは持ってないから、一応距離をとって歩く」
「……さっすがナイト! 頼りになるな!」
そう珍しく褒めてやっても「いいから前を見て歩け」なんてあしらうナイトに笑い、少女の家へと歩き始めた。
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